【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権は31日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、即日公表する異例に早い対応でICBM開発に自信を示した。金政権は、ウクライナを侵略するロシアへの派兵と並行して軍事協力を深めるロシアを後ろ盾に、核・ミサイル開発を一層加速させる姿勢を鮮明にしている。
北朝鮮メディアは31日、金正恩朝鮮労働党総書記の命令で行われた今回の発射実験は「世界最強の威力を持つ共和国(北朝鮮)の戦略的抑止力の近代性と信頼性を誇示した」と強調した。朝の発射を正午ごろには公表しており、通常、発射の翌日に公表してきたことと比べて異例の早さだ。
86分間という最長の飛翔時間も記録し、昨年12月のICBM発射と比べて飛翔能力が大幅に改良された可能性がある。
米韓当局は、北朝鮮が今年9月に公開した片側12輪以上の過去最大級の移動式発射台が使われたのかにも注目している。
韓国統一研究院の洪珉(ホン・ミン)先任研究委員は、ICBMなど戦略核戦力の演習を行ったロシアと歩調を合わせ、両国が「核同盟であると誇示する」狙いもあると分析する。ロシアは10月29日に多弾頭ICBMなどの演習を実施した。日米韓当局は、北朝鮮の今回の発射にロシアの技術が反映されていないか分析を進める。
昨年9月の金氏の訪露以降、ロシアの技術支援が顕著なのが、軍事偵察衛星の改良だ。韓国当局は、多数の露専門家が訪朝するなど、露側の支援で衛星再打ち上げの準備が整っているとみている。最近、北朝鮮が東部の新浦(シンポ)周辺で大型潜水艦を建造する動きも捕捉。金氏が開発を急ぐ原子力潜水艦ではないのか、派兵の見返りにロシアの原潜建造技術が渡ることがないか警戒している。
米韓が最も警戒を強めているのが7回目の核実験の可能性だ。これまで最大の後ろ盾だった中国が核実験の自制を求めてきたとされるが、国連安全保障理事会常任理事国のロシアが北朝鮮を強く支持することで、国連制裁が強化される可能性はほぼない。韓国政府は、金氏の決断次第で核実験を強行し、大統領選で政権が代わる米国に揺さぶりをかける可能性も否定できないとみている。