Infoseek 楽天

吉田氏の虚偽証言、初掲載は昭和57年 朝日「信頼される新聞になることで責任を果たす」 朝日慰安婦報道取り消し10年

産経ニュース 2024年8月4日 19時41分

朝日新聞は平成26年8月5日付と6日付朝刊で「慰安婦問題を考える」と題した特集記事を掲載し、同紙の慰安婦報道を検証した。5日付では、韓国で女性を慰安婦にするため強制連行したと証言してきた吉田清治氏(故人)について「確認できただけで16回、記事にした」と明らかにし、吉田氏の証言は「虚偽だと判断」したとして16本の記事を取り消した(同年12月に2本追加)。

当初は謝罪せず

朝日が女性を強制連行したとする吉田氏の話を初めて掲載したのは昭和57年9月2日付の大阪本社版朝刊。吉田氏の大阪市内での講演内容として、「(昭和)18年の初夏の一週間に済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」などと伝えた。

韓国で女性を強制連行したとする吉田氏の証言には早くから疑問が呈されていた。現代史家の秦郁彦氏が平成4年3月、済州島で現地調査を実施すると、地元のジャーナリストや古老らはそろって吉田証言を否定した。産経新聞は秦氏の調査結果を4年4月30日付朝刊で伝えた。

朝日は吉田証言について、秦氏の調査から約22年後にようやく虚偽と判断し、記事を取り消したが、その間、吉田証言は韓国政府が1992年(平成4年)7月に発表した「日帝下の軍隊慰安婦実態調査中間報告書」や国連人権委員会(当時)に提出された報告書で強制連行の根拠とされた。

朝日は平成26年8月5日付紙面では謝罪をせず、記事を放置した間に吉田証言が世界に広まった責任についても認めなかった。

ジャーナリストの池上彰氏は当時、朝日に連載していたコラムで「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と記したが、朝日がこのコラムの掲載を一時見送ったことも明らかになった。

三者委「報道機関として役割欠いた」

朝日が立ち上げた慰安婦報道を検証する第三者委員会は26年12月に公表した報告書で、朝日が当初、謝罪しなかったことについて「反対世論や朝日新聞に対する他紙の論調を意識する余り、これのみを相手とし、報道機関としての役割や一般読者に向かい合うという視点を欠いたもので、新聞のとるべきものではない」と批判した。検証記事については「朝日新聞の自己弁護の姿勢が目立ち、謙虚な反省の態度も示されず、何を言わんとするのか分かりにくいものとなった」と指摘した。

朝日の慰安婦報道が国際社会に与えた影響に関しては、第三者委員会の複数の委員が「韓国における慰安婦問題に対する過激な言説を、朝日新聞その他の日本メディアはいわばエンドース(裏書き)してきた。その中で指導的な位置にあったのが朝日新聞である。それは、韓国における過激な慰安婦問題批判に弾みをつけ、さらに過激化させた」と指摘した。

政府「国際社会に大きな影響」

政府は、吉田証言について「大手の新聞社の一つである朝日新聞により、事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた」としている。

このほか朝日は26年8月5日付紙面で、「太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」(平成4年1月11日付朝刊の用語説明メモ)などと、軍需工場などで勤労する女子挺身隊と慰安婦を混同していたことも紹介した。「当時は、慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同がみられたことから、誤用しました」と釈明した。

産経新聞は朝日新聞社に対し、10年前の吉田氏の関連記事取消しについて現在、どのように考え、どのように位置づけているかを質問した。同社広報部は「当時、紙面や当社のサイトでお知らせした見解や位置づけと変わってはおりません。2014年12月に公表した慰安婦報道を検証する第三者委員会の指摘と提言を踏まえ、日々の取材と報道に取り組んで参ります。信頼される新聞になることで、責任を果たしていきたいと考えております」と回答した。(原川貴郎)

この記事の関連ニュース