【ソウル=時吉達也】韓国法務省は9日、捜査当局の要請を受けて尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を出国禁止とした。韓国大統領の出国が禁じられるのは初めて。これに先立ち、検察当局は内乱と職権乱用の疑いで尹氏を捜査していると明らかにしていた。
検察はまた、尹氏に「非常戒厳」宣布を進言したとされ、内乱罪などで告発された金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相の身柄を8日に拘束した。最大野党「共に民主党」議員は同日、軍防諜司令部が作成した戒厳関連文書を公表。軍内部の検討が11月中から進んでいたと主張した。
複数の韓国メディアは、金氏が3日の戒厳宣布の1週間前、北朝鮮が断続的に韓国に飛ばしている「ごみ風船」の発信元を攻撃する案を韓国軍関係者に提起したと報道。北朝鮮との緊張を高めることで、戒厳宣布が必要な環境の整備を図った可能性があるとした。
尹氏に対する7日の弾劾訴追案採決で、与党「国民の力」議員はほぼ全員が投票に参加せず、弾劾訴追は不成立となった。同党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は8日、国民向けの談話で尹政権の「秩序ある早期退陣」を進める方針を改めて示した上で、尹氏が今後「外交を含め国政には関与しない」と強調。談話の発表に同席した韓悳洙(ハン・ドクス)首相は、米韓同盟と日米韓協力を強固に維持すると訴えた。
弾劾を回避して事態収拾を図ろうとしている与党側に対し、野党側は大統領権限を代行する法的根拠が不明だとして反発。11日にも臨時国会を開き弾劾訴追案を再び提出する予定で、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は「14日に必ず弾劾する」と述べた。同党は毎週土曜に採決する日程を可決まで毎週繰り返す方針。