韓国でも年末年始の映画館はそれなりにかき入れ時だが、今年は歴史モノの『ハルビン』が話題作。ところがこれが過去、何回となく映画化されてきた韓国人独立運動家、安重根(アンジュングン)による中国・満州のハルビン駅での伊藤博文暗殺(1909年)の話で、日本人にとっては「またか…」といささか疲労感が残る。
安重根は韓国を支配した伊藤博文への〝仇(あだ)討ち〟を果たした愛国者として韓国偉人伝でトップ級の人物だが、そのドラマ化はいわば韓国版「忠臣蔵」である。江戸時代、主君の恨みを晴らすため吉良上野介を〝仇討ち〟した忠臣・大石内蔵助ら赤穂浪士の話に似ているからだ。それに「忠臣蔵」は年末年始の映画やドラマの定番だった。
今回の安重根映画は近年流行の〝抗日独立戦争〟という活劇調でもなく〝東洋平和〟を願った苦悩の安重根という心理ドラマでもなく、中途半端で盛り上がりに欠ける。それに日本官憲による拷問シーンだけは必ず登場する。ただ、暗殺される伊藤博文が余裕たっぷりの穏やかな老政治家に描かれているのは意外?
今年は日韓国交正常化60周年で双方官民挙げて新たな友好協力話が想定されている。日本の韓国ブームも続きそうだが、年初から100年以上前の昔話がネタの反日愛国映画では落ち着かない。(黒田勝弘)