【ソウル=桜井紀雄】韓国の捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」は19日、「非常戒厳」宣布を巡る内乱首謀などの疑いで、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)を逮捕した。ソウル西部地裁が18日の逮捕状発付の可否を決める審査を経て19日未明、証拠隠滅の恐れがあるとして発付を認めた。
大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外。昨年12月に国会などに兵力を投入し、国会議長や与野党の代表らを拘束しようとしたとされる戒厳は、現職大統領が初めて逮捕されるという前例のない展開を迎えた。
15日の拘束令状による一時的拘束とは異なり、今回の逮捕で15日からの拘束期間も含めて最長20日間の身柄拘束が可能となり、尹氏に対する捜査が加速する見通しだ。
尹氏は19日、弁護団を通じて「司法手続きで最善を尽くして戒厳宣布の目的と正当性を明らかにする。時間がかかっても諦めない」と表明した。
これまでも取り調べをほとんど拒否してきた尹氏は、19日も公捜処が求めた取り調べに応じなかった。検事総長出身の尹氏は、戒厳宣布に内乱容疑が適用されたことに「法律家として理解しがたい」との反応を示したという。尹氏は戒厳宣布は大統領固有の統治行為であり、犯罪には当たらないと主張してきた。
既に逮捕・起訴された軍司令官らが国会での戒厳解除要求決議の妨害などを尹氏が指示したと供述しており、捜査当局は、尹氏が今後も取り調べを拒み続けても起訴に踏み切る可能性が高い。
尹氏の一部支持者らは19日未明、逮捕状発付に反発して地裁の建物内に乱入し、内部を破壊するなど、暴動に発展した。