過去に弾劾訴追された韓国大統領は2004年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏、16年に朴槿恵(パク・クネ)氏の2人で、朴氏は17年3月に罷免された。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領への弾劾訴追案が可決されれば歴代3人目となる。
朴氏は韓国憲政史上初めて弾劾訴追で罷免された大統領だ。友人の国政介入事件や、14年に修学旅行中だった多数の高校生らが犠牲になった旅客船セウォル号沈没事故への対応を巡り、退陣を求める国民の抗議集会が拡大。16年11月に「進退を国会の決定に委ねる」と国民向けの談話を発表し、12月に国会で弾劾訴追案が可決された。
憲法裁判所は約3カ月後の翌年3月、在職の裁判官8人の全員一致で朴氏の罷免を決定し、即時失職した。憲法裁は友人の国政介入事件は違憲とした一方、旅客船沈没事故当日の対応は弾劾事由に当たらないとした。
盧氏は、総選挙前に新政党の勝利を期待する発言などによる公職選挙法違反や政治資金隠蔽(いんぺい)などが問題視され、04年3月に国会で初めて弾劾訴追を決議された。憲法裁は約2カ月後の5月14日に弾劾に当たらないと判断し、棄却。盧氏は大統領職に復帰した。
韓国メディアによると、憲法裁は国会が可決した弾劾訴追決議だけでなく世論などを総合的に検討するとされる。盧氏の弾劾には、多くの支持者が全国的な反対デモを展開したことも判断に影響したとみられている。(石川有紀)