【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は23日、自身の罷免の可否を決める憲法裁判所の弾劾審判の弁論に出廷し、昨年12月に宣布した「非常戒厳」について「失敗した戒厳ではなく、予想よりも少し早く終わったものだ」と主張した。国会に投入した兵力も「少数」に限られ、「兵力の移動指示は合法的」だったと強調し、改めて戒厳宣布を正当化した。
尹氏の出廷は21日に続いて2回目。この日は戒厳を尹氏に進言したとされる金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相(内乱罪で起訴)への証人尋問が行われた。金被告は、戒厳には首都圏の軍部隊を全て投入する必要があると提案したものの、「警告用なので少数だけ動員せよ」というのが「尹大統領の指示だったので、それを尊重して準備した」と、尹氏の主張に沿う答弁を繰り返した。
尹氏が直接、元側近の金被告に質問する場面も見られた。尹氏が、軍部隊の投入は「秩序維持」が目的であり、野党本部や世論調査会社には「私が『(部隊を)送るな』と言ったのを聞いたか」と問うと、「後で指示されたことを聞いた」と答えた。
国会で戒厳解除を求める決議案が可決されるのを阻むため、尹氏が直接、議員を「引きずり出せ」と命じたとする軍司令官らの証言を巡っても、金被告は「理解できない」と反論し、尹氏による指示を否定した。
一方、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」は23日、内乱首謀などの疑いで逮捕した尹氏を同日付で送検すると発表した。公捜処は15日に尹氏の身柄を拘束、19日に逮捕した。だが、尹氏が取り調べを拒み続ける中で目立った成果がなく、当初の予定よりも早く、起訴権を持つ検察に尹氏の捜査を委ねることになった。
検察は既に、戒厳に関わった複数の軍司令官らも起訴しており、2月上旬に尹氏を起訴する見通しだ。