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少子化で韓国第2の都市、釜山まで消滅危機 「進学はソウルへ」の偏向打破なるか

産経ニュース 2024年7月25日 15時48分

【ソウル=桜井紀雄】日本を上回る速度で少子高齢化が進む韓国で最近、首都ソウルに次ぐ南部にある第2の都市、釜山(プサン)まで消滅危機にあるとの分析が発表された。「将来、韓国がなくなる」との極論も叫ばれる中、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は対策を急ぎ始めた。最も力を入れる政策の一つが、大学進学での地方回帰の促進策だ。

「出生率低下や地方の人口減など直面する問題は日本と似ているが、急激さが異なる。日本で20~30年かけて進行した問題が韓国では5~10年の間に起きた」

地方消滅問題に対応するため、大統領直属の下、昨年立ち上げられた委員会トップを務める禹東琪(ウ・ドンギ)氏は、産経新聞など外国メディアとの会見でこう指摘した。

釜山の危険度は上から2番目

高齢者や若い女性の人口の割合から政府機関が算出した将来消滅の危機がある地域として、釜山は危機度が上から2番目に高いカテゴリーに分類された。主要自治体のうち、特に危険性がないとされたのは中部の都市、世宗(セジョン)だけだ。ソウルから多くの政府機関が移転した世宗へは、若い公務員世帯の流入が続く。

韓国で30年後も人口増が予測される主要自治体は、世宗と、首都圏の京畿道(キョンギド)に限られる。韓国は女性1人が生涯に産む子供の数を示す昨年の合計特殊出生率が0・72を記録するなど、極端な少子高齢化が進む。

禹氏は、地方でも子供をソウルの大学に進学させることが第一の目標とされるなど、高等教育での「ソウル偏向」が、出生率低迷と地方からの若者人口の流出の背景にあると説明する。

若者が目指すソウルも出生率低迷

若者が進学や就職でソウルを目指す流れが加速してきた半面、ソウル首都圏での住宅価格高騰や苛烈な受験競争による教育費負担から結婚や出産を敬遠する若者も少なくない。ソウルに職場があってもソウルで新しい家庭を持つことを諦める若い世代が多く、ソウルの出生率は0・55に低迷。ソウルさえ急激な高齢化や人口減に直面するという悪循環に陥っている。

進学を機にした地方からの人口流出を食い止めるため、政府は、地方大学や地元産業界との連携計画の策定など高等教育政策の裁量権を自治体に預ける「教育発展特区」制度を導入。地方大卒業生の雇用優遇措置の拡充なども打ち出した。

特に受験で人気が集中する医学部の分野で、来年度から大幅に増やす入学定員の8割以上を地方大医学部に充てることを決めた。地元高校生の受験での優遇措置も取られ、子供を医学部に進学させようと、子供と一緒に住居を地方に移す母親が現れ始めたという。

ただ、急激な定員増に医学界は反発し、研修医が大挙現場を離脱する事態も起きた。韓国では進学や就職でのソウルへのこだわりが根強く、若者の地方回帰を実現する道のりは遠い。

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