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中朝国境で北朝鮮の洪水復旧作業が難航 中国側の堤防強化で被害拡大、海外の支援は拒否

産経ニュース 2024年8月11日 20時35分

中朝国境の鴨緑江周辺で発生した大規模な洪水被害の復旧作業が難航している。中国側が堤防を強化したことに伴い、北朝鮮側で被害が拡大。金正恩(キム・ジョンウン)政権はロシアや韓国を含む国際社会の支援の申し出には応じず、被災地支援を他地域の住民らに負担させる形で自力再建を図っている。

あふれた水が北朝鮮側に集中

洪水は7月末に北朝鮮北西部・新義州(シニジュ)などで発生した。鴨緑江では1995年など過去にも氾濫被害が相次ぎ、新義州対岸の中国・丹東側では堤防を大幅に強化したため、あふれた水が北朝鮮側に集中する構造となっていた。

韓国メディアは政府当局者の分析として、北朝鮮での犠牲者が最大1500人に上ると報道。中朝を結ぶ鉄道も北朝鮮側で寸断され、交易に影響が出ているもようだ。

米政府系のラジオ自由アジア(RFA)は衛星写真の分析を基に、新義州浄水場が浸水した可能性があると報じた。浄水場が浸水すれば飲料水の欠乏や伝染病の蔓延(まんえん)に発展する恐れがある。

韓国の支援表明に回答せず

新義州浄水場が2010年8月の豪雨で浸水した際には、国際赤十字社が流域住民に580万リットル以上の飲料水を提供した。しかし、今回の洪水では今月1日、韓国の大韓赤十字社が韓国政府と共同での支援を表明したのに対し、北朝鮮側は回答していない。

昨年来軍事協力を強化するロシアのプーチン大統領も人道支援の意向を示したが、金正恩総書記は「助けが必要な時はモスクワに求めるだろう」と謝意を述べただけだ。

国外の支援を受けずに自力での復旧を目指す方針とみられ、北朝鮮メディアによると、6日には被災地に派遣され復旧に当たる青年らの出陣式が開催された。出席した金氏は、志願した青年が30万人近くに達したと述べた。朝鮮労働党中央委員会は、被災した住居などについて「すべて新たに」「別天地として整備」するとの決定書を採択したという。

住民に支援の供出要求か

韓国の北朝鮮ニュースサイトは北朝鮮消息筋の話として、「被災地支援のため、当局が各世帯にトウモロコシ5キロと生活必需品などの供出を要求し、住民が不満を示している」と報じた。

国外の人道支援の申し出に応じない理由について、韓国の著名シンクタンク、世宗研究所の崔銀珠(チェ・ウンジュ)研究委員は「金正恩氏の最高指導者就任後、北朝鮮は災害発生時に支援を拒む姿勢で一貫している。父(金正日=キム・ジョンイル=総書記)の代との差別化を図り、国民を守るのは国家であり外国ではない、と印象付ける狙いだ」と指摘する。

8月中も豪雨などの発生が予測され、「自力での再建が不可能な程度に被害が拡大する可能性もある」(崔氏)状況下の北朝鮮。党機関紙、労働新聞は6日付の記事で党幹部らに対し「あり得ない極度の状況まで想定し、対策を講じるべきだ」と訴えた。(時吉達也)

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