【リオデジャネイロ=平田雄介】ブラジル南東部リオデジャネイロで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議は19日、2日間の日程を終えて閉幕した。会議は「自国第一」を掲げるトランプ次期米大統領の就任を前に、国際協調の行方を占う場となった。議長国ブラジルは、G20の結束の重要性を随所で強調した。会議は「陰の主役」といえるトランプ氏を常に意識する形で進んだ。
気候変動、協調遠く
ブラジルのルラ大統領は閉会あいさつで、「公正な世界と持続可能な地球を築いていこう」と発言。「われわれはもっとうまくやる責任がある」とも述べ、G20が連携して国際的な課題に当たる重要性を指摘した。
トランプ氏は米国のパワーを最大限に生かせる2国間交渉を好み、忍耐と時間を要する多国間交渉を敬遠しがちだ。ルラ氏は来年1月のトランプ氏の大統領就任を前に、先手を打つように結束を呼びかけた。
トランプ氏はG20の重要テーマである気候変動対策を巡っても、協調には程遠い立場だ。大統領選の期間中に、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの再度の離脱を宣言。「掘って、掘って、掘りまくれ」と訴える化石燃料活用派であり、採掘を制限したバイデン政権からの方針転換は確実だ。
ブラジルが取りまとめた会議の首脳宣言では、パリ協定の順守に関わる記載が少なくとも9カ所に登場。協定の目標達成に向けて「結束し続ける」と将来の行動を縛るかのような文言があり、「トランプ氏への牽制だ」と報道陣の話題になった。
各国の対立に拍車か
ただ、会議ではトランプ氏と気脈を通じるアルゼンチンのミレイ大統領が、ジェンダー平等を促進する項目や持続可能な開発目標(SDGs)、SNSでのヘイトスピーチ(憎悪表現)規制に率直な物言いで反対。足並みがそろわない場面も目立った。
ミレイ氏の言動について、地元政策研究機関のオリバー・スチュンケル准教授は「トランプ氏がG20に戻ってくる来年の首脳会議で何が起こるかを予感させた」と感想を語った。
首脳宣言は会議初日の18日に公表された。ロシアのウクライナ侵略について、食料・エネルギー安全保障などへの悪影響を憂慮したが、対露非難は昨年に続いて盛り込まれなかった。トランプ氏の返り咲きで懸念が高まる保護主義への反対を明確には示さなかった。
先進7カ国(G7)のほか中国やロシアなど新興国が参加するG20はそもそも一枚岩でなく、ロシアのウクライナ侵略以降はさらに対立が浮き彫りになっている。今後、G20での合意形成がますます困難になる可能性が指摘されている。