【カイロ=佐藤貴生】レバノン国会で9日、軍司令官のジョセフ・アウン氏が投票により新大統領に選ばれた。レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは1年以上戦ったイスラエルと昨年11月末に停戦で合意したばかりで、アウン氏は国の混乱を収拾する重責を担う。
大統領職は2年以上にわたり空席だった。アウン氏は演説でイスラエルの攻撃を阻止して国を再建すると強調した。また、国家だけが武器を所有する権利を持つと述べ、ヒズボラを牽制(けんせい)した。
ヒズボラはイスラエル軍に主要幹部を殺害され、兵器も破壊されて戦闘能力が著しく低下したもよう。レバノンでは民兵組織のほか有力政党も持つが、支持する大統領候補が投票前に立候補を辞退した。勢いには陰りがみえる。
レバノンは2020年にデフォルトを宣言し、経済は以前から低迷していた。前大統領が22年10月に任期を終えて退任してからは大統領も選出できず、政治は空転状態が続いていた。
アウン氏はヒズボラとイスラエルの停戦で主要な役割を果たしたとされ、米仏やサウジアラビアは同氏の大統領選出が財政支援の条件だとして国会議員らを説得したとの見方も出た。
民族が混在するレバノンでは権力集中を避けるため大統領はキリスト教マロン派から、首相はイスラム教スンニ派から、国会議長はシーア派から選ばれる。