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コンゴ衝突、「アフリカの優等生」ルワンダに非難の声 武装勢力支援で欧米が態度硬化

産経ニュース 2025年2月12日 10時0分

アフリカ中部コンゴ民主共和国(旧ザイール)で、政府軍と反政府勢力「3月23日運動(M23)」の衝突が続いている。M23はコンゴ東部の都市を制圧し、最近の死者は2800人を超えたもようだ。コンゴの資源を狙う隣国ルワンダがM23を支援しているとみられる。ルワンダは虐殺の混乱から欧米の援助で安定成長を実現して「アフリカの優等生」と呼ばれたが、近年は強権化が進展。欧米との距離感が一気に広がる可能性があり、情勢は複雑さを増している。(荒船清太)

100万都市を制圧 「深刻な人権侵害」

1月25日、M23はコンゴ東部の都市、ゴマを制圧し、コンゴ軍の48時間以内の武装解除を求めた。ロイター通信によると、ゴマは人口100万人以上を抱える東部最大の都市。M23はその後、停戦を呼び掛けたが戦闘は続いている。

M23はコンゴとルワンダの国境地帯で活動を続けていたが、今年に入って支配地域を拡大。国連は支配地域で強姦などの深刻な人権侵害が起きているとする。

国際社会が疑うのが、ルワンダのM23支援だ。ルビオ米国務長官は1月28日、ルワンダのカガメ大統領に即時停戦などを要求したほか、先進7カ国(G7)の外相も今月1日、「ルワンダが後押しするM23による攻勢を強く非難する」とする共同声明を発表した。ルワンダ側は衝突への関与を否定し続けている。

コンゴは銅や携帯電話のバッテリーに使われるコバルトの一大生産地。ルワンダはM23を通じ、埋蔵資源を狙っている疑いがある。

中国がコバルト供給網の大半を「掌握」

衝突の背景には、フツとツチという2つの民族の国境をまたいだ対立がある。

M23やルワンダ現政権はツチが母体。一方、コンゴ東部にはフツが多い。ルワンダでは1990年代、フツ過激派がツチやフツ穏健派数十万人を虐殺を繰り広げた。

抑圧されたツチを率いてルワンダを掌握したのがカガメ氏だ。欧米はルワンダ復興のため、カガメ氏を国を復興させたヒーローとして官民挙げて物心両面で助けてきた。ルワンダは経済的には小国ながら安定した政情を背景に周辺国の紛争に派兵するなど、地域の覇権国として地歩を固めつつある。

ルワンダの統計によると、2023年の国別海外直接投資残高でアフリカ諸国を除いたトップは米国で2億ドル(約300億円)。同年の海外直接投資額上位には米国のほか、ドイツ、フランス、オランダなどが名を連ねる。

欧米諸国はM23支援を巡り、将来的にはカガメ政権への制裁に乗り出す可能性があり、欧米との関係が冷却化する可能性がある。

こうした事態にほくそ笑むのは、中国かもしれない。既に中国はコンゴのコバルト供給網の大半を抑える一方、ルワンダへの投資残高も1億ドル(約150億円)を維持している。

衝突の行方次第で、中国が両国への権益を一気に広げ、勢力図が塗り替わる可能性がある。

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