【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザで戦ってきたイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスは15日、停戦で合意した。協議を仲介したカタールのムハンマド首相兼外相が記者会見で発表した。19日に発効する。イランやレバノンへと戦火が拡大し、シリアのアサド政権崩壊の一因となるなど中東に激震をもたらした戦闘は、開始から約1年3カ月をへて収束に動き出した。
停戦が維持されれば中東全域の緊張緩和につながる可能性がある。バイデン米大統領は「ガザの戦闘は停止され、人質は家族のもとに帰る」と述べて合意の成立を認めた。20日に米大統領に復帰するトランプ前大統領は、自身の就任前の停戦を求めて強い圧力をかけていた。
ロイター通信などによると停戦案は3段階で、第1段階の6週間にハマスは人質33人を解放し、イスラエルは投獄した多数のパレスチナ人を釈放する。ガザには約100人の人質が拘束されており、うち30人以上が死亡したとの観測もある。
また、イスラエル軍はガザ中部から段階的に撤収し、ガザには毎日トラック600台分の人道支援物資が搬入される。
第2段階に関する協議は停戦発効の16日後に始まり、恒久的停戦やイスラエル軍のガザからの完全撤収などが含まれる。第3段階では国連などの監督の下、ガザの再建が始まる見通しだ。
ハマスは2023年10月7日にイスラエルを奇襲し、ガザから同国に侵入した戦闘員数千人が市民を無差別に襲撃。約1200人を殺害し、約250人を人質としてガザに連行した。
イスラエルのネタニヤフ首相はハマスの壊滅と人質全員の救出を目標に直ちにガザへの爆撃を開始。ガザでは少なくともパレスチナ人4万6700人が死亡し、約11万人以上が負傷した。双方は23年11月下旬からの1週間、戦闘を休止して人質などの身柄を交換した。
ハマスへの連帯を表明した中東各地の親イラン民兵組織は、「抵抗の枢軸」と称してミサイルや無人機でイスラエルを攻撃し、戦闘は広域化。昨年4月と10月にはイスラエルとイランが初めて本土を攻撃し合った。
イランと連携するヒズボラが拠点を置くレバノンもイスラエルの攻撃対象となり、昨年12月にはシリアで長期独裁体制を築いたアサド政権が崩壊した。政権の後ろ盾だったイランやヒズボラが弱体化し、支援が手薄になった隙を突いた反体制派の攻撃が奏功した。