【ワシントン=渡辺浩生】米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は19日に公表した年次報告書で、中国がイランとの関係を深め、同国が輸出する原油の約90%を購入しているとの分析を示した。イランや親イラン武装勢力に軍事転用可能な技術や部品も提供しているとし、中東における米国の安全保障上の利益を弱体化させていると警鐘を鳴らした。
報告書は今回、中国と中東との関係について初めて単独の章を設けて分析。特に中国はイランと米国主導の国際秩序に敵対する立場を共有しているとし、米イラン間の対立や米主導の制裁に伴うイランの孤立化を自らの利益のために活用していると言及した。
報告書は、中国が近年、米国の制裁を迂回(うかい)する経路や手段を使いイランからの原油輸入を増やしていると指摘。米非営利団体などの試算に基づき、中国は2023年、イランから日量110万バレル(前年比9%増)を輸入したと見積もった。数値が正しければ、中国はイランの原油輸出の90%近くを購入していることになるという。
報告書はその上で、中国の石油購入は「イラン政府がテロ集団や地域の代理勢力に資金提供することを可能にしている」と言及した。
中国にとり、イランは全原油輸入の約10%を占める4番目の供給元になるが、中国税関当局は23年からイランの石油輸入を報告していないという。輸入は、マレーシア、アラブ首長国連邦、オマーンの積み替え施設を通じ、中東の石油と表示して行われているとみられる。
報告書は中国が軍民両用の先端技術や無人機、弾道ミサイル用を含む部品をイランやイエメンの親イラン民兵組織フーシ派といった傘下の武装勢力に提供していると指摘。中国製品はイラン製無人機を使ったロシアのウクライナ侵略を支えるだけでなく、「中東における非国家主体の軍事作戦を支えている危険性」に触れた。
調査委は、議会の指示により国家情報長官が中国とイランの原油取引を半年以内に調査した上で財務省が必要な制裁措置をとるよう勧告した。