【カイロ=佐藤貴生】ヘリコプターの墜落で事故死したライシ大統領の後継を選ぶイラン大統領選の決選投票で、6日の開票の結果、国際協調を重視する改革派のペゼシュキアン元保健相(69)が、保守強硬派のジャリリ最高安全保障委員会元事務局長(58)に勝利した。内務省が発表した。
ペゼシュキアン氏は6日、X(旧ツイッター)に投稿した国民向けのメッセージで、「あなた方に手を差し伸べ、一人にしないと誓う」と強調した。
決選投票は19年ぶり。米欧との関係が悪化した保守強硬派のライシ政権発足以来、約3年ぶりに対外融和を掲げる政権が復活する。改革派大統領のかじ取りで対米関係や核開発問題に変化が現れるかが注目される。
イランのメディアによると、開票済みの約3053万票のうち、ペゼシュキアン氏は約1638万票を獲得した。ジャリリ氏は約1353万票だった。
有権者は6100万人超で、投票率は49・8%と、過去最低だった6月28日の1回目投票(約40%)を上回った。ただ、投票率が48・8%だった21年の前回大統領選以来、有権者の半分以上が投票をボイコットしており、イスラム教シーア派の政教一致の革命体制にとって正当性が問われる事態が続いている。
ペゼシュキアン氏は、イランが核開発を制限する見返りに米欧などが経済制裁を解除する2015年の「核合意」を支持。18年に合意を一方的に離脱して制裁を再開した米国などとの対話を通じ、制裁解除を目指すと主張した。
ジャリリ氏は制裁は当面解除されないとの前提に立ち、経済的自立を強化して米欧への妥協を排除すべきだとし、ライシ師の路線継承を掲げた。
1回目投票では、保守強硬派が候補を一本化できず票が割れ、首位のペゼシュキアン氏と2位のジャリリ氏が決選投票に進出した。
米欧だけでなく国内の市民にも強硬な姿勢を崩さない保守強硬派を嫌い、保守層の一部がペゼシュキアン氏に投票するとの観測も出ていた。