20日、米大統領に就任したトランプ氏は、大統領への復帰前から、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦協議に影響力を発揮してきた。1期目にはエルサレムをイスラエルの首都と認定するなど同国を強力に支援しており、2期目の中東政策もイスラエル支持が軸になりそうだ。
アラブ4カ国とイスラエルの国交正常化を実現したトランプ氏は、1期目からイスラエルと地域大国サウジアラビアの正常化に関心を抱いていた。イスラエルにハマスとの停戦を求めたのも、サウジとの正常化に向けた地ならしと解釈できる。
イスラム教の2大聖地を抱えるサウジは世界の信徒に絶大な影響力がある。イスラエルと国交を樹立すれば、パレスチナ国家建設という「大義」の形骸化は避けられない。
パレスチナ問題では、イスラエルによるヨルダン川西岸の併合を承認するか否かも焦点になりそうだ。第2次政権の駐イスラエル大使に指名されたハッカビー元アーカンソー州知事は併合支持者として知られる。
ただ、西岸の人口300万人超の8割以上はパレスチナ人。西岸を併合すればイスラエル全体で多数派のユダヤ人との人口差が縮まり、「ユダヤ人の国」という建国時の理念が揺らぎかねない。
イスラエルの宿敵イランには、1期目同様に強硬姿勢で臨むとの見方が支配的だ。「最大限の圧力」政策でイランの核開発に歯止めがかからなければ、核関連施設への軍事攻撃に踏み切るとみる識者もいる。(カイロ 佐藤貴生)