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ハマス、最高指導者殺害でイスラエルへの報復明言 イランも同調で中東の緊張増大へ

産経ニュース 2024年7月31日 19時38分

【カイロ=佐藤貴生】イスラム原理主義組織ハマスは31日、最高指導者ハニヤ氏の殺害はイスラエルによるものだと断定した。事実ならイスラエルにとって昨年10月以降続くハマスとの戦闘で最大級の成果となる。一方、ハマスは報復を明言し、米国などが仲介する停戦の合意実現は遠のいた。イランもイスラエルへの敵対姿勢を強め、中東の緊張が高まっている。

イスラエルはこれまで敵対するハマスのトップの暗殺を謀ってきた。創設者のヤシン師、その後継者であるランティシ氏を相次いで殺害。今回、ハニヤ氏も殺害されたことで、ハマスは組織の再構築を余儀なくされ、パレスチナ自治区ガザの戦闘にも影響が及ぶ可能性がある。

中東の衛星テレビ、アルジャジーラ(電子版)などによると、ハニヤ氏は軍事部門を率いる他の幹部に比べ「現実的で穏健」な指導者だった。ガザを巡る停戦交渉でも協議を仲介するエジプトなどに足を運び、中心的役割を果たしていた。

昨年10月のイスラエル奇襲を主導したガザの責任者シンワール氏は、ハマス内部で停戦を拒む対イスラエル「最強硬派」で、今もガザの地下トンネルに潜伏しているもようだ。ハニヤ氏死去を受け、徹底抗戦を主張する勢力と組織延命のための停戦受諾に傾く海外拠点の幹部らとの路線対立が深刻化しかねない。

ハマスはハニヤ氏殺害を受け、イスラエルに対して「報いを受けないままにはしない」と表明した。また、イランの最高指導者ハメネイ師は「賓客を私たちの家の中で殺害した」としてイスラエルへの復讐(ふくしゅう)は「義務だ」と断言した。4月に続いてイスラエル本土に軍事攻撃を仕掛ける事態さえ否めない情勢となった。

ハメネイ師は殺害前日の7月30日、イラン・テヘランでハニヤ氏と面会し、イスラエルとの戦闘継続に謝意を示した。後見役を自任するハマスのトップが殺害されて警備体制の甘さをさらけ出し、メンツは丸つぶれだ。2020年には「核開発の父」と称された核科学者がテヘラン近郊で暗殺され、イスラエルと連携する工作員の関与説も出た。

ハニヤ氏殺害は、イスラエル軍がレバノンの親イラン民兵組織「ヒズボラ」のナンバー2を狙って30日夜に行った攻撃の数時間後に起きた。目まぐるしく情勢が変わる中でオースティン米国防長官は31日、「戦闘(の拡大)は不可避だとは思わない。常に外交の余地はある」と述べた。

ただ、軍事的緊張は中東各地に拡散しつつある。イラク駐留米軍は30日、自衛のためだとして反米の民兵組織の拠点を空爆したと発表した。親イランの「人民動員隊(PMF)」が対象とみられ、イランと連携する勢力がそろって米イスラエルへの攻勢を強めかねない事態となってきた。

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