【カイロ=佐藤貴生】シリアのアサド政権崩壊で中心的役割を果たしたイスラム過激派「シリア解放機構」(HTS)の指導者ジャウラニ氏は、同政権のジャラリ首相らと面会して政権移行について協議した。ロイター通信が9日伝えた。歴史的な政権崩壊から一夜明け、政治プロセスの正常化に向けた動きが始動した形だ。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラは9日、北西部イドリブの地元政府トップ、モハメド・バシル氏が政権移行を担うとの見通しを報じた。イドリブにはHTSの拠点がある。
政権を打倒した諸勢力はSNSで、アサド政権軍に徴募された兵士を免責するとし、安全を保証すると発表した。国民和解をアピールする狙いとみられる。
一方、イスラエル軍は8日、首都ダマスカスなどシリア各地を空爆した。サール外相は9日、残存する化学兵器や長距離ミサイルが過激派の手に渡るのを防ぐためだとし、シリア内政に介入する気はないと説明した。
軍は8日、占領するゴラン高原の非武装地帯(DMZ)を越えてシリア側に進入したが、サール氏はイスラエルの安全確保が目的で限定的な動きだと述べた。
シリア北部ではトルコが支援する民兵組織と、米国が連携する少数民族クルド人主体の民兵組織が衝突した。アサド政権が崩壊しても民兵同士が対立する火種は残っている。