大井川の水問題や南アルプスの環境問題で、議論が加速するリニア問題。静岡市の難波市長は、4日の協議会で「残土置き場が災害危険度を高めるとは言えない」と話し、県が示した懸念に異論を唱えました。
(川勝知事)
「(田代ダム案の)実現性を技術面から確認するため、引き続き専門部会でJR東海との対話を進めていくという姿勢の上で、検討に値する案であるという意見があるので、それを尊重したい」
Q:リニアの工事にとって一歩前進したとお考えでしょうか?
「そうですね」
先週、JR東海が示していた「田代ダム案」の実施案を県が了承し、大きな進展を見せたリニア問題。水問題解決へ道筋が見えたことで、今後、リニア新幹線をめぐる議論の焦点が移っていくのが、トンネル工事が行われる南アルプスの環境問題です。
環境問題をめぐっては、4日、市民グループが静岡市に対し、環境問題について議論を深めるよう求める要望書を提出しました。
こうした中、4日に行なわれたリニア工事に関する静岡市の協議会。県の理事を退職し、11月から静岡市に採用された織部康宏 環境政策監も初めて参加しました。協議会で、議論が交わされたのは、リニアのトンネル工事で出た土を処理する「残土置き場」について。
「残土置き場」をめぐって、JR東海は、大井川上流の「ツバクロ」に大半を盛り土する計画ですが、県は、上流部の山で深層崩壊の恐れがあり、下流域の災害リスクを高める可能性があるなどとして、難色を示しています。
土木の専門家でもある難波市長は、これまで、リニア問題をめぐる県の姿勢に疑問を呈してきました。
(静岡市 難波市長)
「ボーリング抗は断面積小さいので、引っ張るといっても大した量を引っ張ってこない。断層破砕帯のように水が供給されない場合は、ほとんど問題にならない」
6月には、山梨側でのボーリング調査に反対する県の方針について会見で大根やペットボトルを使って説明し「県の見解には課題がある」と反論。4日の協議会でも、県の懸念に対し、難波市長が市の見解を“熱弁”しました。
難波市長は、県が懸念する上流部の山での「深層崩壊が発生した」場合、最大で9000万立法メートルの土砂災害があると想定した上で、検証した結果、「ツバクロの残土が災害危険度を高めるとは言えない」との見解を示しました。
(静岡市 難波市長)
「ツバクロ盛り土がない場合に比べ、ツバクロ盛り土の360万㎥が最大危険度を上げることにはならない。したがって、JR東海はこの用地について責任は問われない」
県が示す深層崩壊の懸念を「残土があっても災害の危険を高めるものでない」と一蹴した難波市長。また、委員からの「科学的背景が明確でない」という指摘に対しては…。
(静岡市 難波市長)
「科学的というのは、科学的ものの考え方が大事であって、正確な計算をしたらいい結果が出るわけではない。(委員の)先生にご見解いただければと思うが、ほとんど意味のない計算になる」
難波市長による説明は、約1時間半にも及びました。
(静岡市 難波市長)
「これだけの深層崩壊が起きて、大規模な天然ダムが形成されたときには、もうみんなで必死にやるしかない。ちょっと長くなりましたけども、これで説明は以上になります」
静岡市は、残土置き場の予定地である「ツバクロ」について、今後、地震や雨による影響などを検証した上で、市としての見解をまとめる方針です。
一夜明け、5日も難波市長は、報道陣に対し「ツバクロ」残土置き場について、マグネットなどを使いながら、静岡市の見解を説明しました。
(静岡市 難波市長)
「本来は『盛り土あり』と『盛り土なし』を 比較しないといけない。ところが『盛り土なしで深層崩壊する場合』の影響を誰も評価していない。県も評価していない」
難波市長は、残土置き場をめぐる議論の論点にはズレがあると指摘した上で、適切に検証した結果「ツバクロの残土が災害危険度を高めることはならない」との見解を改めて示しました。
(静岡市 難波市長)
「深層崩壊と盛り土もあるという時に、土砂ダムが横長の状態になる。だから災害危険度は『盛り土あり』の方は低い。盛り土をしたからといって、深層崩壊の最大危険度を上げてはいない」
また、難波市長は、残土置き場をめぐる議論は「詰めの段階」として、今後、議論が終わり次第、市としての見解を県に示す意向を示しました。
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