21日、静岡市役所を訪れた国の有識者会議、中村太士座長。
(国の有識者会議 中村太士 座長)
「地元の人たちに説明するチャンスを与えていただき、ありがとうございます」
リニア新幹線をめぐっては、トンネル工事に伴う環境への影響を懸念し、静岡県は静岡工区の着工を認めていません。一方、工事が行われる南アルプスの環境保全策について、2022年6月から14回にわたり議論を重ねてきた国の有識者会議は、2023年12月、報告書をとりまとめ、国交省に提出しました。
報告書は、JR東海が示していた「工事を進めながら、対策の見直しを行っていく」手法を支持する内容となっています。静岡市北部にある「南アルプス」の環境保全に関する報告書について、静岡市の難波市長は「不十分な点はある」としながらも「高いレベルの検討が行われた」と評価していました。
こうした中、21日、報告書について中村座長と直接意見を交わした難波市長。非公開で行われた面会の中で、難波市長が「南アルプスの生物への影響を工事前に予測すべき」と主張したのに対し、中村座長は「困難性が高い」と話すなど、意見が食い違う場面もあったということです。
(静岡市 難波市長)
「静岡市としては、まだまだ議論していかないといけないところがある。そこについてはしっかり議論していくと申し上げた。専門的な知見について中村座長にこれからもお伺いしたいので、直接お会いできたことは非常に有意義」
(国の有識者会議 中村太士 座長)
「私はパーフェクトな報告書を作ったとは思っていない。限られた時間の中でやってきた。足りない部分を補足するようなかたちで、建設的な議論を進めていただけたら。協力できることがあれば協力したい」
その後、中村座長は、島田市役所を訪れ、大井川流域8市2町の首長とも意見交換しました。終了後、島田市の染谷市長は、南アルプスの環境保全に関して「今後も国の関与を求めた」ことを明らかにしました。
(島田市 染谷市長)
「報告書について、理解を深めることができた時間。流域市町の要望で一番大きかったのは、今後、国はどう関与していくのか。流域市町の首長は誰一人リニアの工事を反対していない。住民に理解していただけるよう説明を重ねながら、工事の進捗をはかっていくことが静岡県の利益になるのでは」
一方、川勝知事との意見交換の場は設けられませんでしたが、国交省の村田鉄道局長は「今後、機会があれば検討したい」と話しました。
南アルプスの環境保全に関する議論に絞られつつあるリニア問題。議論がどう進展していくのか県の動向が注目されます。
この記事の動画はこちらから再生できます