2022年に静岡市で消防隊員が死亡したビル火災をめぐり、6日、当時、消火活動を行った元消防隊員が会見を開き、市の検証結果に反論しました。元隊員の訴えについて専門家は「消防局の組織風土に問題がある」と指摘しました。
2022年8月、静岡市葵区呉服町のビルで火災が発生し、消火活動を行っていた消防隊員1人が死亡しました。この火災をめぐり、静岡市消防局は2月、当時、駿河消防署の小隊長だった30代の隊員が、死亡した隊員に対しロープを使わずに進入するよう指示したとして、業務上の義務違反などで減給6か月の懲戒処分としました。
この処分について、6日、元消防隊員が会見を開いて反論。元消防隊員は、死亡した隊員と一緒に火元の捜索活動を行っていましたが、懲戒処分を受けた「元小隊長の判断は間違っていなかった」と訴えました。
(元消防隊員)
「なぜ(命綱などを)使用しようしなかったのか、今の時代にそぐわない方法であり、安全でもなければ合理的な証明もされていないからです」
元消防隊員は、6日の会見で当時の進入方法を再現。隊員同士をつなぐロープを使わなかった理由として「通路が狭くロープが絡まる可能性があり危険だった。小隊長の判断は間違っていなかった」と訴えました。
これについて、元東京消防庁の坂口隆夫さんは「命綱の装着は絶対にするべきだった」と指摘しました。
(元東京消防庁 坂口隆夫 さん)
「(命綱の使用は)大原則。狭いとか広いとかの問題ではない。命綱は着けないと、今回の火災現場は通路など広くない。だからより必要なんです。濃煙が充満して、高温になっていた」
一方で坂口さんは、命綱を使わずにビルに進入するよう指示した小隊長1人に責任を負わせた「静岡市消防局の組織風土に問題があるのでは」と厳しく指摘します。
(元東京消防庁 坂口隆夫 さん)
「火元はわかっていたはず。わかっているのになぜ(隊員が)火元を確認するのか。屋内進入する目的がないにも関わらず、屋内進入をさせた、私はその方が問題だと思います。これは現状の指揮本部と活動隊との連携が全く取れていなかったということ。私は小隊長が懲戒処分を受けるのは、どうかと思う。静岡市消防局の問題でありながら、小隊長に責任を押し付けている。それは違うのではないかと思う」
その上で、坂口さんは現場を監督する静岡市消防局の上層部が一人も処分されていないことに疑問を呈しました。
6日の会見で元消防隊員は、火災当時の自らの行動について、苦しい胸の内を語る場面もありました。
(元消防隊員)
「一度でも振り向いていれば助けられたかもしれない、ということは1年半たっても、今でも思うのは事実です」
静岡市消防局の活動基準では「命綱」を装着することになっていましたが、現場の判断で「命綱」を使わなかったことは適切だったと訴えた元消防隊員。
坂口さんは、風通しの悪い組織文化をあらためない限り、事故が繰り返される危険性があると警告します。
(元東京消防庁 坂口隆夫 さん)
「聞きたいですね、静岡市消防局の幹部に。命綱とかそういう細かい問題ではなく、危険な屋内進入がなぜ必要だったのか。同じような活動を継続するのであれば、また同じような事故が起きる可能性は十分にあると思う」
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