河本千奈ちゃん 当時3歳。2022年9月、静岡・牧之原市の川崎幼稚園で通園バスに置き去りにされ重度の熱中症でなくなりました。
業務上過失致死の罪に問われているのは川崎幼稚園の当時の園長増田立義被告と元クラス担任の女の被告。起訴状などによりますと増田被告は園管理者としての責任とバスの運転手として千奈ちゃんを車内に置き去りにした2つの責任、元クラス担任の被告は千奈ちゃんが登園していないことを知った後も保護者に連絡をせず、所在の確認をしなかった責任を問われています。
そして23日。
(髙山 基彦 キャスター)
「午前8時45分すぎです、増田被告が静岡地裁に入ります」
黒いスーツ姿で現れた元園長の増田被告と元クラス担任の被告。午前10時、静岡地裁で初公判が開かれました。裁判の冒頭、裁判長から「あなたがやったことで間違いないか」と起訴内容について問われると…
増田被告「はい」
元クラス担任の被告「ありません」
などと述べ、2人は起訴内容を全面的に認めました。
事件から1年7か月、今も定期的に花が手向けられている通園バスの駐車場。
この事件をめぐっては2022年12月、増田立義元園長と元保育士ら計4人が、業務上過失致死の疑いで書類送検され、2023年11月、業務上過失致死の罪で増田元園長と元クラス担任が在宅起訴に2人の保育士が不起訴処分となりました。
普段は通園バスを運転せず、当日、臨時で運転手を務めた増田被告。事件当日、バスから園児を降ろした後、全員が降りたか確認していませんでした。
(増田 立義 被告)
「(バス車内の)後ろをちょっと見た。見るには見た。ドアのと ころを見たが、その後運行記録 に目を移してしまったのがミス だった」「年齢的に一つのことを やると一つ忘れてしまうことが あるため、本当に申し訳なかった」
当時のことを毎日反省しているという増田被告。
23日、検察は冒頭陳述で、バスの中に1人残っていた千奈ちゃんが、あとから来た送迎バスを見て「あっケーキバス」「後ろから来てるよ」などと声を上げたのが、ドライブレコーダーに記録されていましたが、増田被告は千奈ちゃんの声に気付かなかったことを明らかにしました。さらに、被告人質問で弁護士が増田被告に千奈ちゃんの命を奪ってしまったことについて聞くと。
(増田 立義 被告)
「腹立だしく、情けないと思っている」
「千奈ちゃんを失わせてしまった ことを謝罪して、お詫び申し上 げたい。このことに関しては私 の責任だと思っています」と話しました。
なぜ、千奈ちゃんが犠牲になってしまったのか、
(千奈ちゃんの父親)
「「朝起きるときも妻の泣いている声で起きたり」「そこから妻と一緒に気持ちを吐き出して、共感しあったり」「そういった中で育児もやっていかないといけないし」「生活もしていかないといけない」「辛い時間というのは長く感じると思う」
23日、千奈ちゃんの父親は「被害者参加制度」で裁判に参加しました。
23日、裁判に参加した父親が「ついたて」の向こうから、「千奈がバスのなかでなくなった気持ちがわかりますか」と増田被告に尋ねると、「苦しい思いをしていたんだなと思います」と答えました。
さらに、「福岡の事件を知っていたのになぜ安全対策を怠ったのか?」と、質問されると…。
(増田 立義 被告)
「いずれやればいいと思っていた」
と答えたのです。
いまも傷は癒えることのない千奈ちゃんの遺族。
初公判を前に4月 取材に応じた遺族は、「正直、僕たちの望む判決になることは難しいと思う」と話し、2人の被告に対して、「裁判のために用意された言葉ではなく、自分の本音で話してほしい」と訴えていました。
23日の初公判、当時、増田被告と約束していた川崎幼稚園を「廃園する」という質問に関しては一貫して…。
(増田 立義 被告)
「申し訳ないが私からは言えません」
ほとんど遺族の座る方に視線を向けず、時折、黙りながら遺族らの質問に答えていました。
次回の公判は5月15日、元クラス担任の被告の被告人質問が予定されていて、遺族も出席する予定だということです。
ここからは、23日の裁判を傍聴していた高山キャスターに伝えてもらいます。
(髙山 基彦 キャスター)
改めて事件の経緯です。この事件は、2022年9月5日、静岡・牧之原市の川崎幼稚園に通っていた河本千奈ちゃん 当時3歳が約5時間、通園バスに置き去りにされ、重度の熱中症で死亡したものです。
当時のバスですが、ラッピングが施されていて、外から車内の様子を確認することは難しい状況だったことがわかります。当時、バスには運転手と補助員、園児6人が乗車していて、千奈ちゃんはバスの後ろ側の席に座っていたということですが、増田被告は全員が車を降りたことを確認せず、バスを施錠したということです。
続いては、なぜ園の職員らが、異常に気づかなかったかです。千奈ちゃんを乗せたバスは園に到着し、千奈ちゃん以外はバスを降ります。その後、副担任が千奈ちゃんがいないことに気付き、担任だった被告に報告しましたが、欠席と思い込み保護者に連絡をしませんでした。正午の給食でも千奈ちゃんの分が残りましたが、誰も千奈ちゃんの所在を確認することはなく、午後2時10分ごろ、通常の運転手がバスの中で倒れている千奈ちゃんを発見しました。
裁判ではどのような責任が問われているのでしょうか?
(髙山 基彦 キャスター)
業務上過失致死の罪で在宅起訴された元園長の増田被告と元クラス担任の被告ですが、増田被告は降車時の人数と車内の確認をせずバスを施錠した責任。元クラス担任の被告は千奈ちゃんがいないことを認識しながらも保護者に確認しなかった責任を問われていて、23日の初公判で2人は起訴内容を全面的に認めました。
その後、弁護側、検察側、遺族の順に増田被告の被告人質問が行われました。弁護側が増田被告に千奈ちゃんの命を奪ってしまったことについて聞くと、増田被告は「腹立だしく、情けないと思っている」と述べ、「千奈ちゃんを失わせてしまったことを謝罪して、お詫び申し上げたい。このことに関しては私の責任だと思っています」と謝罪しました。また、遺族が「千奈がバスのなかでなくなった気持ちがわかりますか」と尋ねると、増田被告は「苦しい思いをしていたんだなと思います」と答え、さらに「福岡の事件を知っていたのになぜ安全対策を怠ったのか?」という質問には「いずれやればいいと思っていた」と答えました。
次回の裁判は5月15日、担任だった被告への被告人質問が行われます。