58年前、旧清水市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんのやり直しの裁判は、22日すべての審理が終わり、判決を待つのみとなりました。
袴田さんに代わり、法廷で語った姉ひで子さんの心境はー
(姉 袴田ひで子さん)
「きょう死刑と言ったそうですが、私は耳が悪くて聞こえませんでした。判決への思いは、巌は無実ですからね、無罪だと思っております。本当に長い裁判で、本当に皆さんにもおつかれでございましょうが、ご苦労様でございました。ありがとうございました」
こう話すのは袴田巌さんの姉、ひで子さん。
15回にわたり開かれた袴田さんの再審公判は、22日、すべての審理が終結しました。
1966年、旧清水市でみそ製造会社専務の一家4人が殺害された事件で逮捕され、死刑が確定した袴田巌さん、現在88歳。
去年10月、静岡地裁で再審が始まりました。
再審の最大の争点は、事件から1年2か月後にみそタンクの中から発見された、袴田さんの犯行着衣とされている“5点の衣類”。
弁護側は、1年以上みそ漬けされた衣類の血痕は「黒くなり」「赤みが残らない」ので、発見直前にみそタンクに入れられ、ねつ造された証拠と主張。
検察側は、7人の法医学者による共同鑑定書を示し「赤みが残ることはある」と反論しています。
検察側は、22日の論告で、5点の衣類を除いても袴田さんの犯人性がある証拠が複数あると主張したほか、弁護側の訴える“5点の衣類”のねつ造の可能性について「非現実的な空論」と指摘。
「4人の将来を一瞬にして奪った犯行は極めて重大で強固な殺意に基づいた極めて冷酷で残忍なもの」として袴田さんに再び死刑を求刑しました。
一方、弁護側は最終弁論で、検察の主張は再審請求審の蒸し返しと批判し、5点の衣類について「赤みは残らない」と主張し、検察側の専門家の証言については「赤みが残る抽象的な可能性を指摘しているに過ぎない」と反論。袴田さんの無罪を訴えました。
(小川弁護士)
「(5点の衣類が)犯行着衣であるということに対して、検察は論告で、血がついている血痕付着状況と衣類が損傷している状況は本件の犯行対応と整合している、だから犯行着衣だと言っているだけ」
また、心神喪失の状態である袴田さんに代わり、出廷した姉ひで子さんは、当時、袴田さんが母親あてに書いた手紙を読み上げ、無実を訴えました。
「弟の巌を人間らしく過ごさせていただきますようお願い申し上げます」
(姉 袴田ひで子さん)
「巌は今、こうして話をすることもできないですよね。だから、その代わりにあたしが陳述した巌の気持ちを一生懸命伝えたいと思って。今はまともじゃないから、話をしても難しいから、どんな風な気持ちって言ったっていうわけじゃない。だから、それよりも事件当時、巌が書いた手紙を読んでみようかなと思っていた」
また、法廷では、検察官が読み上げるかたちで、被害者遺族の意見陳述が行われ、被害者夫婦の孫が「この事件で尊い4人の命が奪われたことをわすれないでほしい。真実を明らかにしてほしい」などと訴えました。
事件から58年。ようやく開かれた再審が終結したことについて、姉ひで子さんはー
(袴田ひで子さん)
「58年かかってやっと再審開始になった。だから私は、58年は長いには長いけど、知らないうちに過ぎてしまった。(再審開始から)1年経ちましたが、この1年の方が長いと思っている」
ピンク色を基調とする服を着ることの多いひで子さんですが、きのうは“シロ”。その理由を記者が尋ねると
(袴田ひで子さん)
「白ということを強調するように、思い切り白で参りました。」
判決は、9月26日に静岡地裁で言い渡される予定で、弁護側が主張する「証拠の捏造」について裁判所がどのような判断を下すのか注目されます。
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