静岡県議会6月定例会が開会し、鈴木知事が就任後初めての県議会に臨みました。前知事は議会との対立が目立ちましたが、鈴木知事が所信表明で語ったこととは?
知事就任から3週間。鈴木康友知事は、19日 初めて県議会に出席し“所信”を表明しました
(鈴木知事 )
「本県全体の均衡ある発展に向け、全ての県民の皆様と力を合わせて、オール静岡で幸福度日本一の静岡県を実現してまいります」
冒頭に語ったのは県議会とのコミュニケーションについて。
(鈴木知事)
「また、県政の様々な課題に対応していくため、まずは、二元代表制の一翼である県議会の皆様と、コミュニケーションをしっかりと図り、真摯に議論を積み重ね、車の両輪として県政を推進してまいる所存であります」
県議会をめぐっては、川勝前知事のいわゆる「コシヒカリ発言」を発端に、史上初めて知事への辞職勧告決議が可決されたり、その後の「給与未返上問題」では不信任決議案が提出されるなど議会との対立が目立っていました。
現在も、県議会は知事選で鈴木知事の対立候補を支援した自民党会派が過半数を占めていて、知事の県議会への対応が注目されています。そのうえで県政運営の考え方については…。
(鈴木知事)
「行政運営は企業経営とよく似ており、これからの行政に求められるのは、明確な「経営」の方針であります」「社会課題が複雑化し、自治体経営が難しさを増す中、リーダーである首長が、判断の物差しをもっていることが大変重要であります。私の経営方針は、大きく5つあります」
示したのは「税金を無駄にしないこと」、「前例踏襲せず挑戦すること」など、5つの方針でした
(鈴木知事)
「『巧遅より拙速』であります。これは、巧みで遅いよりも、多少拙くてもスピードが重要という意味であります。最近の経営用語で申し上げれば『アジャイル』です。まずやってみて、その結果を踏まえて改善を加え、より良いものに仕上げていくという手法です」
また、県政の大きな課題、リニア新幹線の静岡工区の問題に関しては…。
(鈴木知事)
「国の関与のもと、一つ一つの課題の解決に向けて、大井川流域の市町等としっかりと連携し、JR東海との対話をスピード感を持って進めてまいります。あわせて、リニア建設に伴う本県へのメリットについて、議論を進めていくことも非常に重要であります。東海道新幹線の利便性の向上をはじめ、県内市町のご意見を伺いながら、本県のメリットの最大化に向けて、しっかりとJR東海と話を進めてまいります」
そして、浜松市に建設を予定している新野球場に関しては、新たに協議会を設け検討すると話しました。
(鈴木知事)
「私は選挙期間中から、県、浜松市、民間が、それぞれの責任分担と応分の負担をする必要性を訴えてまいりました。また、整備費や維持管理費を縮減するための一つの提案として、開放型ドームを示しました。このため、今後、公園を含む全体的な利活用の構想として、野球場を含む周辺のまちづくりやにぎわい創出、県と浜松市の役割分担、民間活力の活用などについて、新たな協議会を設置し、改めてしっかりと検討してまいります」
川勝前知事とは度々対立した自民党会派。所信表明をどう受け止めたのでしょうか。
(自民改革会議 相坂 摂治 代表)
「いままでの知事と県議会との関係が節目を迎えて新しい局面になる。新しい場面がこれから始まっていくので、まず情報共有をしっかりしたい。そういう意味ではきょうの内容にもこれまで知事就任後にお会いになった方々への報告も盛り込まれていたので、情報についてはきちんと公開してくださっているのかなと思いました」
一方、知事選で鈴木知事を支えた第二会派の「ふじのくに県民クラブ」は…。
(ふじのくに県民クラブ 田口 章 会長)
「選挙戦で訴えていたことを実践していくという意欲が表れていた」「浜松市政のときも最初は元民主党の国会議員ということでいろいろな見られ方があったと思うが、最終的には議会と非常にいい関係だった。県においても、そういうスタンスでわだかまりなくコミュニケーションを取ってくれるのでは」
(スタジオ解説)
(澤井 志帆 キャスター)
鈴木知事は19日の所信表明で何を語ったのか、ポイントをまとめます。
知事は、県政運営にあたっての基本的な考えを説明する中で、「行政運営は企業経営とよく似ている」として、その経営方針は5つあると述べました。
経営感覚を持ち、将来世代に対して責任を負うこと。税金を無駄にしない。前例や役所の常識にとらわれず新しいことに挑戦。人を活かす、などがあり、
また「巧遅(こうち)より拙速(せっそく)」巧みで遅いよりも、多少つたなくてもスピードが重要と県政運営の姿勢を示しました。
(津川祥吾 アンカー)
鈴木知事の最初の所信表明演説という形ですが、「経営」という言葉をよく使っていますが、今回の演説を聞いてどのように感じますか?
(コメンテーター 増田 英行 弁護士)
「巧遅より拙速」ということだったんですけれども、私は、個人的にはこの言葉を持ち出すことに少し異論があります。言葉によるのではないかと思うんです。確かに「拙速」とおっしゃっていることはわかります。やってみて修正をしつつ、とにかくやってみることが大事だということもあると思うんです。が、ただ、県政の中の事柄には一歩踏み出したら止まれないこととか、取り戻せないような事柄も当然あると思うので、そういった場合にはやはり「巧遅」の方がいい、そちらを優先すべき事柄もあるのではないかと私は考えています。
(スタジオ解説)
(澤井 志帆 キャスター)
続いて、県政の重要課題のうちリニア問題については、これまで通り「リニアは推進の立場であるが、大井川の水、南アルプスの環境保全は堅持する」と述べ、リニア建設による「県へのメリットについてJRと議論を進めていく」と述べました。
また、18日、静岡県と山梨県、JRの3者間で山梨県側でのボーリング調査実施について合意したことを報告し、「今後、県内でのボーリングについても大井川流域市町や利水関係者の了解を得るための手続きを進めていく」と述べました。
浜松市の新野球場に関しては、野球場を中心に周辺を整備し、集客力のある施設にすることが必要だと述べ、県と浜松市、民間が応分の負担をする 一つの案が開放型ドームであるとの考えを示しました。今後、新たに協議会を設置し、県と浜松市の役割分担などを検討していくと述べています。
リニアや新野球場について、19日の所信表明では踏み込んだ内容はなく、これまでの主張をまとめたという印象でした。
県議会6月定例会は、来週月曜日から各会派の代表質問や議員からの一般質問が行われ、鈴木知事が初めて議会での論戦に臨むことになります。
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