富士山は、7月1日、山梨県側が開山しました。2024年から登山者に対し、2千円の通行料を徴収するなど新たな登山規制が導入され、10日に開山する静岡県側と違いが出ています。
(山梨県の担当者)
「3時になりましたので開門いたします」
7月1日、富士山山梨県側の登山道「吉田ルート」が山開きを迎えました。2024年、新たに導入された登山規制のため、5合目にはゲートが設置されました。規制では、午後4時から午前3時まで、山小屋の宿泊予約がない登山者の通行を禁止、また登山者の1日当たりの上限を4千人としています、さらに通行料2千円の支払いも義務化されました。
(登山者)
「すごい人で、マナーを守らない人もいるし、道路の整備も大変だといつも思っていたので2000円は妥当、もっととってもいいと思う」
(登山者)
「山がそれによって保持されるならよいと思う、マナー違反は嫌なのでマナーを守って登山をしてくれる人が増えるとうれしい、しっかり4人分、任意の分(保全協力金)も含めて払いました」
規制を導入した狙いは、過度な混雑緩和と夜間の弾丸登山の防止があります。
2023年夏の富士山の登山者数は約22万人で、このうち山梨県側の吉田ルートからの登山者は13万7千人と6割以上を占め、山頂付近の混雑が問題となっていました。また、山小屋に泊まらず夜通し山頂を目指す「弾丸登山」も、安全性の面から課題となっています。
(髙山 基彦 キャスター)
「一方、静岡県側からの登山者は、事前登録のシステムが導入されていますので早速やってみます」
静岡県でも2024年から「事前登録システム」を導入、6月10日から運用が始まり、7月1日までに1万6千人あまりが登録しています。
登山者は、パソコンやスマホから、入山する日時、宿泊予約の有無、登山口までの交通手段などを入力。また、この時、富士登山のルール・マナーを学習する動画を見るよう促されます。登録が終わると、メールで2次元コードが送られてきて、当日、登山口でスタッフに提示してリストバンドを受け取るという仕組みです。ただ、事前登録は任意で、山梨県のような人数制限や通行料の徴収はありません。導入の狙いはどこにあるのか、県の担当者に聞きました。
( 県富士山世界遺産課 大石 正幸 課長)
「この先を見据えて、富士山の入山管理ということをコストをかけずに中長期で考えた時に、DX、デジタル技術を最大限に活用する必要があると考えていて、まずは2024年、スマートフォンあるいはパソコンからの事前登録を、2024年は試験的にやってみることが狙い」
また、登山者に登山ルール・マナーを周知することも狙いの一つだと話します。ただ通行料の徴収など山梨県と同じような規制の導入にはハードルが高いといいます。
( 県富士山世界遺産課 大石 正幸 課長)
「静岡県側の場合は、3ルートあって、それぞれに状況が異なる。あと県有地でないので県で管理するとなると土地の所有者の方、主に国になるが、調整というか相談をしていく必要がある。静岡県側に(山梨と)同じようなゲートを造ろうとすると、やはり、かなり個所数が多くなり、コストの問題、あと人を置くと24時間置く必要があるので、なかなか、すぐに2024年の夏からは、というところで調整が難しかったというのがあります」
山梨県側の方が、より強い規制の内容となったことで影響が出ています。須走口5合目で山小屋を経営する米山千晴さんに聞きました。
(東富士山荘 米山 千晴 代表)
「うちの山小屋ばかりではなく、ほとんどの山小屋が、もう、一杯ですね。山梨県が規制という報道が出始めてから、インバウンドの方々が一気にこっちへシフトした」
ここ数年、インバウンド需要が急増する中で迎える夏山シーズン。山梨県の登山規制によりさらなる混雑が予想されると言います。
(東富士山荘 米山 千晴 代表)
「やっぱり地方から来る人は、支度をして来る、予定を入れて、それがいきなり駄目だからと帰ることはないと思う、どこか空いている所を探す、で、やっぱりこちらの方に回ってくるのが必然的だと思う」
また、一つの山に2つの制度が存在することについて苦言を呈します。
(東富士山荘 米山 千晴 代表)
「富士山に来る人は、富士山は一つだと思っている。それが登る所、県によって考え方が違うのは、そういうこと自体がおかしいと思いますよ。やはりこういう風なことをやるには事前に調整をして同時進行でやるべきではないのか、富士山は一つ、どこから登っても同じでないと失礼だと思うし、やはり入場制限も含めて同じにすべきじゃないか」
2024年はどんな夏山シーズンとなるのか、関係者の期待と不安が入り混じる中、静岡県側は10日に山開きを迎えます。
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