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【熱海土石流】7月3日で発災から3年…被害を拡大させた“違法な盛り土”を防ぐ取り組みの現状は(静岡)

Daiichi-TV(静岡第一テレビ) 2024年7月2日 17時15分

2021年。28人が犠牲となった静岡・熱海市の土石流災害で、被害を拡大させたのが違法な盛り土でした。土石流の発生から7月3日で3年。静岡県内では“独自の対策”で抑止力を高めている自治体がある一方、新たな課題も浮き彫りになっています。

熱海市伊豆山に住む田中公一さん74歳。毎朝、妻・路子さんの遺影に手を合わせます。田中さんは、被災を免れた伊豆山地区に所有する別の土地に2023年、新しい家を建てて一人暮らしをしています。最近、よく眺めているのが「被災前に撮った写真」です。

(田中 公一さん)

「気持ちが落ち着いてきて、振り返れる、やっと。あの当時をね」「1人になるとなかなか大変だよね…がんばっていくしかないかなと思って」

2021年7月3日に発生し、28人が犠牲となった熱海市の土石流災害では、規制以上に積み上げられた盛り土が大規模に崩落しました。田中さんの自宅は濁流となった土砂に流され、35年連れ添った路子さんが帰らぬ人となりました。田中さんは、今も週に一度は自宅があった場所に足を運んでいます。

(田中 公一さん)

「ちょっと持ってきた」

子どもや孫が遊びに来て、にぎやかだった日々…違法な盛り土が崩落し、妻が亡くなった災害を風化させないためにも、被災前の記憶を思い起こしています。

(田中 公一さん)

「ここだけで済んでほしい。これ以上、ほかの所で同じような災害が起きることはあってはならないと思う」「抱かれてても首が座っていなかった子が、自分でおもちゃ出して遊んで」「こういう姿を、なぜ見せてやれなかったかなという…そんな感じの3年だな」

熱海の災害を受けて行われた県の調査で、違法な盛り土は、県内に約160か所造成されていたことがわかっています。そして、8割が集中しているのが、首都圏から建設残土が運び込まれることが多い県東部です。その多くは危険な状態のまま放置され、近年、増え続ける大雨により崩落のリスクもはらんでいます。

6月、大雨が降った翌日に、無許可で造成された盛り土が崩れていないか確認していたのは富士市の職員です。

(富士市の職員)

「きのうの雨も大丈夫そうだよね?」「そうですね。ちょっと心配だったんですが大雨だったので」

崩落は確認されませんでしたが、土砂を見てみると…。

(富士市土地埋立対策室 増田 圭佑さん)

「雨上がりなので水分を含んでいます」「大きい石がないので道路工事で出た建設残土であることがわかります」

これは、2021年に同じ盛り土を撮影した映像です。業者は一度是正の意思を示しましたが、現在は連絡もとれない状態です。そのため、3年たっても土砂は撤去されていません。

危険な盛り土の監視を強化するため、富士市が2年前に本格的に導入したのがドローンによる確認です。これまでは職員が盛り土にのぼって土砂の量などを測量していたため、のり面で滑ってけがをしたこともあったといいます。

(富士市土地埋立対策室 増田 圭佑さん)

「ちゃんと積まれている現場ではないので、崩落の危険性やけがをする可能性があるので」「ドローンの映像は非常に重宝している」

ドローンで撮影した地形の3次元データを元に、盛り土の高さや土砂の量などを解析できるようになりました。

(富士市土地埋立対策室 増田 圭佑さん)

「こちらが盛り土が行われた範囲になります」「測量解析すると、このように表示することができます。赤くなっているところが多く盛られた場所を示していて…」

外部に委託せず職員自ら測量から解析まで行っているため、監視業務のスピードアップにもつながっています。

ほかにも“独自の対策”で抑止力を高めています。

(富士市土地埋立対策室 増田 圭佑さん)

「夜中の3時58分に撮影された動画になりまして、夜中でも、当時、違反行為が行われていました」

これは、富士市が、無許可で造成されていた盛り土に設置した監視カメラの映像。とらえていたのは土砂を運び入れるダンプカーです。富士市はこの映像を警察に提供し、違法な造成をとめることにつなげたということです。

カメラは崩落の可能性がある盛り土の監視にも使われています。この盛り土の20メートルほど先にあるのは川。普段はほとんど水が流れていませんが…大雨になると増水し、土砂が崩落すると川をせき止める可能性があるといいます。

(富士市土地埋立対策室 増田 圭佑さん)

「このカメラがこの場所を映しているので、もし崩落などがあればすぐに撮影を開始してくれるカメラですね」

ここも無許可で盛り土が造成されていましたが、富士市の指導により、2023年から業者が是正を始め、今後、土砂を撤去する予定です。しかし、富士市内に22か所ある違法な盛り土の多くは、土砂の行き先が決まらず、放置された状態が続いています。

(富士市土地埋立対策室 増田 圭佑さん)

「土砂の撤去先、持っていく先が確保できないのが、許可を取っている業者も含めて非常に難しいのが今の建設業界としての課題になっているので、その中で、いかに持っていく先を確保するかが課題だと思います」

規制強化により、違法な盛り土が新たに造成されることは少なくなりましたが、災害のリスクを抱えた危険な盛り土は、まだ県内にも多く残されています。

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