28人が亡くなった静岡・熱海市伊豆山の土石流災害から7月3日で3年。現地では犠牲者を悼み黙とうが捧げられました。被災地の復興は道半ば。さらに災害発生の要因となった盛り土の責任の所在ははっきりとしないままです。
(徳増 ないる キャスター)
「熱海市伊豆山の土石流現場、3年前は茶色い土砂が大量に流れて多くの家屋が飲み込まれてしまった。今は草木が生い茂り、年月が経ったことを感じさせます」
土石流の発生から7月3日で3年。被災した熱海市伊豆山地区では、消防に最初に通報があった午前10時28分に、遺族や被災者が黙とうを捧げました。
2021年7月3日に起きた熱海市の土石流災害。被害を拡大させたのは、規制以上に積み上げられた盛り土でした。崩落した土砂の量は25メートルプールで約130杯分。伊豆山地区には濁流となった土砂が流れ込み、災害関連死を含めて28人が犠牲となりました。また、132世帯が避難を余儀なくされ、2023年、警戒区域が解除されてから自宅に戻ったのは、わずか22世帯となっています。
3日朝、伊豆山地区では追悼式が行われ、鈴木知事が初めて出席しました。遺族らは献花台に花を手向け犠牲者を悼みました。
(災害関連死で父を亡くした 伊東 真由美さん)
「どんなことをしたって、父は帰ってこない。生きているものとしては前に進むしかない。自分らしく生きることが父が一番喜んでくれることだと思うので」
娘を亡くした小磯洋子さんは、鈴木知事に直接、真相を究明するよう訴えました。
(娘を亡くした 小磯 洋子さん)
「もし自分の家族や子どもがこういうふうに殺されたらどうだろうか。この日を機に一瞬でも自分ごととして考えてもらえたらと思います」
遺族の訴えに対し鈴木知事は…。
(鈴木知事)
「最悪の事態を予測できなかった。いろいろな関係機関との連携が不十分だった」「行政対応の失敗という第三者委員会の結論もあるので、しっかり受け止めて、二度とこういうことが起こらないよう再発防止に向けて努めていきたい」
弟2人と手を合わせたのは、母親を亡くした瀬下雄史さんです。母親が暮らしていた伊豆山の家の跡地で祈りを捧げました。
(母を亡くした 瀬下 雄史さん)
「どうしても母の最期を想像してしまう。本当に変わらず苦しいですね」
遺族らでつくる「被害者の会」の会長を務めている瀬下さん。盛り土があった土地の現在と前の所有者、県や熱海市などに対し、損害賠償を求める訴えを起こしています。しかし、前所有者は、これまでの取材に対し一貫して造成への関与を否定し「現所有者が盛り土をしていたのは明らかだ」と主張。これに対し、現所有者の代理人は「盛り土をならしていただけで土砂は搬入していない」と反論しています。さらに、県は「行政対応は失敗だった」としながらも「法的瑕疵(かし)はない」と主張。熱海市も「訴訟の論点になっているので、裁判の中で明らかにする」と述べるにとどめています。
盛り土崩落の責任を押し付けあう状況に、瀬下さんはもどかしい思いを抱いています。
(母を亡くした 瀬下 雄史さん)
「真相究明に伴って責任の追及をしっかりやっていく。罰が下ることによって、それが抑止力となり、再発防止に安全な世の中につながっていく」
崩落した盛り土をめぐっては、遺族が前所有者らに対し、殺人容疑などで刑事告訴しています。捜査関係者によりますと、警察は業務上過失致死容疑での立件を視野に、2024年に入り前所有者への任意聴取を行うなど捜査を続けているということです。
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