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【袴田巌さん再審】検察の控訴断念で「無罪」確定も…取り戻せぬ“時間” 補償など今後については(静岡)

Daiichi-TV(静岡第一テレビ) 2024年10月9日 17時29分

9日、検察が控訴を断念し、47年の獄中生活を送った袴田巌さんの無罪が確定しました。一方、袴田さんは88歳。取り戻すことのできない時間。今後は…。

(袴田さんの支援者)

「袴田さんの無罪が、やっと確定しました」

9日 午後、静岡駅前でビラを配る支援者。9日、静岡地検は控訴する権限である「上訴権」を放棄し、袴田さんの無罪が確定しました。

58年前、静岡・旧清水市で、みそ製造会社の専務一家四人が殺害された事件で強盗殺人・放火などの疑いで逮捕された、住み込み従業員で元プロボクサーの袴田巌さん当時30歳。裁判では事件から1年2か月後に、突然、みそタンクの中から発見された血に染まった"5点の衣類"が袴田さんの犯行着衣と認定され死刑が確定しました。しかし、事件から58年経った9月26日。

(伊藤 薫平 キャスター)

「袴田巌さんに無罪判決、無罪判決と掲げられました」

やり直し裁判=再審の判決で静岡地裁は袴田さんに無罪を言い渡しました。判決では、犯行着衣とされた「5点の衣類」や「自白」など捜査機関による‟3つの捏造”を認定。袴田さんは弁護団や支援者に感謝を述べました。

(無罪判決を言い渡された 袴田 巌さん・88歳)

「待ちきれない言葉なんですけど無罪勝利が完全に実りました」「こがね味噌事件で無罪勝利ということで検察も認めた」

(袴田さんの姉・ひで子さん・91歳)

「ありがとうっていいな」

(袴田 巌さん)

「ありがとうございました」

この判決に検察側が控訴した場合、さらに裁判が長引く可能性がありましたが、8日、検察側は弁護団に控訴しない方針を伝えたのです。

(袴田さんの姉・ひで子さん・91歳)

「やっぱり終わるんだと思って、 58年の苦労というかそういう ものが吹き飛んじゃったと言いますかね、喜びしかいまのとこ ろありません」「これで一件落着で誰にも何もい われないと、巌が死刑囚でなく なるということがとてもうれし ゅうございます」

一方、検察側のトップである畝本直美検事総長が異例の談話を発表。犯行時の着衣とされた「5点の衣類」などが捜査機関による”ねつ造”だと断定されたことについて強い不満をあらわにしました。

(畝本 直美 検事総長)

『「5点の衣類」が捜査機関のねつ造であると断定した上、検察官もそれを承知で関与していたことを示唆していますが、何ら具体的な証拠や根拠が示されていません』『本判決が「5点の衣類」を捜査機関のねつ造と断じたことには強い不満を抱かざるを得ません』

控訴しない理由については…。

(畝本 直美 検事総長)

『本判決は、その理由中に多くの問題を含む到底承服できないもので、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容と思われます。しかしながら、再審請求審における司法判断がまちまちになったことなどにより、袴田さんが長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことに思いを致し、検察が控訴し、その状況が継続することは相当でないと判断に至りました』

そして、袴田さんの法的地位が不安定な状況に置かれたことについて謝罪しました。この談話について、弁護団は怒りをあらわにします。

(弁護団 小川 秀世 弁護士)

「談話を見たが、その内容も非常に私は納得いかないというか、端的にけしからん内容だったと思っています」「検察なんて全然反省がないじゃないですか」

さらに、2014年、静岡地裁の裁判官だった時に、袴田さんの再審開始と釈放を決定した村山浩昭弁護士は…。

(静岡地裁の元裁判官 村山 浩昭 弁護士)

「私は結論が大事だと思う」「控訴しないということは、無罪を覆すことができないという判断をした、つまり無罪判決を受け入れた」「長期間不安定と言ってますけど、簡単にいうと、確定死刑囚にして長いことそういう状態に置いていたということ。それに対する反省だと思う」

そして、9日 朝、静岡県警の津田隆好本部長は、控訴断念を受け謝罪しました。

(静岡県警本部 津田 隆好 本部長)

「袴田さんが、長きにわたって法的地位が不安定な状況に置かれたことについて、申し訳ないと思っ ています」「袴田さんについて、このような思いをお伝えしたいという風に思っております」

しかし、証拠のねつ造などについてコメントを求められると…。

(静岡県警本部 津田 隆好 本部長)

「訴訟当事者ではありませんので…」

県警として明言を避けました。

47年7か月 拘束され死刑への恐怖から精神がむしばまれた袴田巌さん。補償金について刑事補償法では、刑事事件で身柄を拘束され無罪が確定した場合、拘束期間1日あたり1000円から1万2500円を補償すると規定されていて、最大で2億円を超える見通しです。今後、弁護団は国家賠償も求めていくことを検討しています。

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