富士山では、この夏も多くの死傷者が出ました。無理・無謀な登山を減らすため、山梨側に続いて、静岡側でも登山規制を強化する方針で、県が、調査・検討を進めています。
(富士山入山規制調査参加者)
「ここにシャトルバスと路線バスの乗車場をこちらに。安全面的に人の対流をどこまで対応するか」
先週、18日 金曜日、富士山富士宮口5合目に静岡県や環境省、富士宮市などの職員約20人が集まりました。2025年夏から実施予定の新たな登山規制に向けて、通行料の徴収場所などを調査・検討するためです。新たな登山規制が求められる背景とは。
2024年夏の富士山は、開山直後から遭難事故が相次ぎました。Daiichi-TVのクルーが9合目で取材中…。強風で視界が真っ白の中、山の斜面へ駆け寄る人たちが。すると…両肩を支えられた男性が。山小屋の中に運び込まれると。周りの人が大声で呼びかけます。台湾から来た30代の男性。登山中に動けなくなり救助されました。毛布をかけられ、スプーンで温かい飲み物を飲んでいました。
(万年雪山荘 渡辺 和将さん)
「救助行かなければ動けなかった。命につながるような危ない状況だったと思う」
(救助に参加した人)
「だいぶ体温戻ってよかった」
この男性は翌日には回復し、無事下山しました。しかし静岡側の開山直後、遭難事故が相次ぎ、10日から5日間で4人が亡くなるという異常事態となりました。
毎年、開山期間は山頂で働きながら写真を撮り続けている「富士山カメラマン」、植田めぐみさん。開山期間中、登山者の危険な行為をよく見かけたといいます。
(富士山カメラマン 植田 めぐみさん)
「海外の登山客で、片手に缶チューハイを持って歩けないからブルドーザー乗せてくれと」「ちょっと観光気分というか」「命に関わる危険な山と意識しないで登っている方が結構いた」
県警によりますと、今シーズン、静岡側では46件の遭難が発生。2023年より件数は減少したものの5人が死亡、23人がけがをしました。
近年、富士登山では御来光を目指し、夜通しで登山をする「弾丸登山」が問題となっています。山梨側では2024年、弾丸登山や混雑緩和の対策として、新たな“登山規制”を導入しました。吉田ルート5合目にゲートを設置し、夜間、山小屋の予約がない登山者の通行を禁止しました。また、1日の登山者数を4000人までとする上限を設けたほか、通行料として2000円の徴収を始めました。一方、静岡側は、登山前に宿泊予約の有無などを入力する「事前登録システム」を導入しましたが、あくまで“任意”で、強制力はありませんでした。
須走口5合目で山小屋を経営する米山千晴さんは、一つの山に別々のルールが存在することは登山者に混乱を招くと指摘します。
(東富士山荘 米山 千晴 代表)
「やっぱり富士山はどこから登ってもよかったという形にするべき、やはり静岡県の考え方が私は少し遅れていると常々言わせてもらっている。そういう状態がこれから改善されていくなら、どういう形になるか分からないけれど、私は期待しています」
この夏、開山期間中の登山者は、去年より1割ほど少ない約20万4千人。内訳をみると、山梨側の吉田ルートが約2割減少。一方、静岡側3ルートは約9万人で2023年より6%ほど増えました。また、山梨・富士吉田市はゲートを設置した効果として、弾丸登山の可能性が高い午後9時から11時台に6合目を通過した登山者が2023年より9割以上減ったと発表しています。こうした状況をみて、静岡・鈴木知事は、閉山日でもあった9月10日の会見で、条例制定に向け言及しました。
(鈴木知事)
「山梨県と足並みをそろえた条例による登山規制および通行料の徴収を検討することといたしました」「今後、国や地元市町関係者と協議を進め、ゲート設置のための現地調査や2024年以降のWEB事前登録システムをベースとした入山管理システムの構築業務を行っていきます」
こうして行われた18日の調査。5合目から6合目まで数か所を見て歩き、登山者が手続きをする場所や効率的な運営方法などを検討しました。
(県富士山世界遺産課 袖山 菜津子 班長)
「世界遺産富士山の価値を体験してもらうために良い登山体験をしてもらいたい、そのために富士山と登山者の安全、両方を守るために規制を行う、観光と保全は両立していきたい登山規制の目的でもある」
今後、地元の意見を聞きながら、2024年中に条例案をまとめ、2025年2月の県議会での条例制定を目指します。
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