再審=裁判のやり直しで無罪が確定した袴田巌さん(88)は事件から58年で「死刑囚」という立場から解放されました。
(静岡県警 津田隆義本部長)
「言葉では言い尽くせないほどのご心労ご負担をおかけし、申し訳ありませんでした」
10月には県警のトップである津田本部長が袴田さんに謝罪。一方、これまで直接謝罪する態度を示してこなかった検察でしたが、関係者によりますと、27日にも、静岡地検のトップである検事正が袴田さんに直接謝罪する方針であることがわかりました。
1966年、旧清水市でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件を巡っては、1980年に袴田さんの死刑が確定しましたが、2023年10月から静岡地裁で再審が始まりました。検察側は袴田さんに対し死刑を求刑しましたが、2024年9月の判決公判で、静岡地裁は捜査機関による3つの証拠のねつ造を認定し、袴田さんに無罪判決を言い渡しました。
その後、検察が、この判決に不服を申し立てる権利を放棄したことで、袴田さんの無罪が確定。その際、検察のトップである畝本直美検事総長が異例の談話を発表。捜査機関による“ねつ造”を裁判所が認定したことに強い不満をあらわにしました。
(畝本直美検事総長の談話)
『本判決は多くの問題を含む到底承服できないもので、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容と思われます』
10月、この談話に対して弁護団は静岡地検に抗議声明を提出し無罪の袴田さんを犯人視する内容だと撤回を求めました。
(弁護団 小川 秀世 弁護士)
「無罪判決に批判が述べられているが、全く誤っている。検事総長は無罪判決について受け入れて袴田さんに謝罪し、今後は警察と連携したねつ造を深刻に受け止めて検証すべき」
こうした中、袴田さんに謝罪する方針を固めた検察ですが関係者によりますと、静岡地検のトップである山田英夫検事正は、長期間にわたり審理が続いたことについての謝罪や、袴田さんを犯人視していないことなどを袴田さんに直接伝える意向です。
畝本検事総長が「控訴して上級審の判断を仰ぐべき」と表明した一方、謝罪を決めた理由について、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「謝罪をせざる得なかった」と話します。
(元東京地検特捜部 副部長 若狭 勝 弁護士)
「検事総長の談話の時には、あくまで袴田さんが犯人ではないかとにおわせるような談話になってしまった。それをそのままにしておくと検察のイメージとしては決していい方向には向かわない。検事総長の談話をある意味一部トーンダウンさせる意味合いで、静岡地検の検事正が犯人視しているわけではないと謝罪するというのは、流れとしては想定できる。」
しかし、証拠のねつ造問題については受け入れることではないと話します。
(元東京地検特捜部 副部長 若狭 勝 弁護士)
「ねつ造という無罪判決が指摘した点を、検察として受け入れるということでは決してないと思います。このまま検事総長の談話で終わってしまうというのは、国民の検察に対する信頼というのが、全く今後戻らないという見方が強くなった。静岡県警本部長が謝罪したことに合わせて、検事正も検察庁を代表して謝罪するという方が必要だという判断が、内部においても強まったという風に思います。」
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