10月、再審無罪が確定した袴田巌さんに謝罪するため、27日、袴田さんの自宅を訪れた静岡地検のトップ・山田英夫検事正。
(静岡地検 山田 英夫 検事正)
「この事件の犯人が袴田さんであるということを申し上げるつもりはございませんし、犯人視するものではないということも直接お伝えしたい と思います。大変申し訳ありませ んでした」
袴田さんに謝罪し、深々と頭を下げました。
1966年、旧清水市でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件を巡っては、1980年に袴田さんの死刑が確定。袴田さんは約48年にわたり拘束されましたが、2024年9月、裁判のやり直し=再審の判決で、静岡地裁は捜査機関による3つの証拠のねつ造を認定し、袴田さんに無罪判決を言い渡しました。その後、検察が、この判決に不服を申し立てる権利を放棄したことで、袴田さんの無罪が確定しましたが、検察のトップである畝本直美検事総長が異例の談話を発表。捜査機関による“ねつ造”を裁判所が認定したことに、強い不満をあらわにしたのです。
(畝本直美検事総長の談話)
『本判決は多くの問題を含む到底承服できないもので、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容と思われます』
この談話に対して、10月、弁護団は静岡地検に抗議声明を提出。無罪の袴田さんを犯人視する内容だと談話の撤回を求めました。そして、27日、静岡地検のトップが、「袴田さんを犯人視していない」と謝罪したのです。
(静岡地検 山田 英夫 検事正)
「袴田巌さんが、相当の長期間にわたり、法的地位が不安定な状況となり、その間、巌さん、ひで子さんがとても言葉にはできないようなつらいお心持ちで日々を過ごされましたことにつきまして、刑事司法の一翼を担う検察としても大変申し訳なく思っております」「当然のことでございますが、検察として今回の無罪判決を受け入れ控訴しないと決めたものである以上、対外的であるか否かを問わず、この事件の犯人が袴田さんであるということを申し上げるつもりはございません」「改めまして大変申し訳ありませんでした」
(袴田さんの姉・ひで子さん)
「今更、検察にどうこういうつもりは毛頭ありません。私も巌も運命だと思っています。無罪が確定して、今は大変喜んでいます。わざわざおいでいただきありがとうございました」
長年の拘束で精神をむしばまれた袴田さんは。
(袴田 巌さん)
「どこまで戦うのかということの決定が行われている」「そうい うことが最後だっていうことで よろしくお願いします」
一方、検察が謝罪の中で検事総長の「談話」に触れることはありませんでした。
(袴田さんの姉・ひで子さん)
「談話の撤回はなくて、犯人視して いないということだけをおっし ゃった」「あの談話をしたということは検察庁の都合でしたと思う。私はね、巌は無実だから無罪にな るのはあたりまえだと思ってい るから別に問題ない」
一方、検察のトップが発表した談話を批判していた弁護士は。
(弁護団 小川 秀世 弁護士)
「ある意味、当然のことをおっしゃったのかなと思った」「私の受け止め方としては謝罪に 来られるということは、一定の誠意を感じさせるところはあった」「僕の感触では、巌さんが非常に納得、満足、落ち着いたような表情を見せたと理解している」
そして、謝罪後、カメラ撮影を行わない条件で、記者の取材に答えた山田検事正。「談話」について誤解があったと話しました。
(静岡地検 山田 英夫 検事正・取材に対する発言内容)
『談話の中で、判決内容について不服があるということについて、検察の考えを述べさせていただきました』『袴田巌さんを犯人視するものではないかという批判があるということは承知していますが、それは誤解です』
山田検事正は、「控訴しない以上は袴田巌さんを犯人と考えるものではない」などと談話と謝罪は矛盾していないと主張。一方、静岡地裁が指摘した証拠のねつ造については、「判決のねつ造認定はおかしく、承服しがたい」と主張し、談話の撤回はありませんでした。
この記事の動画はこちらから再生できます