浜松市内に建設する新野球場を巡り、静岡県と浜松市は、28日、「規模」や「費用負担」を話し合う協議会を初めて開きました。地元が要望するドーム球場はできるのでしょうか。
28日、初会合が開かれた、新野球場を巡る県と浜松市の協議会。
(増井 浩二 副知事)
「遠州灘海浜公園は、鈴木知事の強い思いがあって、単に野球場を造るだけではなくて、野球場を含む周辺のまちづくりやにぎわいを創出しなければいけない」
“鈴木知事肝いりの事業”であることを強調した増井副知事。ただ、新野球場を巡る議論は、まとまる見通しがたっていないのが現状です。
新野球場の建設予定地は浜松市中央区にある遠州灘海浜公園・篠原地区。この構想は、2024年12月に94歳で亡くなった自動車メーカー・スズキの鈴木修元会長ら浜松経済界の要望を受け、今から11年前に川勝前知事が建設の意向を示したのが始まりでした。
そして、鈴木元会長の支援をうけ浜松市長時代から「ドーム球場」の建設を要望してきたのが鈴木知事です。地元経済界と「ドーム球場」の実現に向けた期成同盟会を立ち上げ、県に対して繰り返し“早期建設”を求めてきました。
(鈴木浜松市長・当時)
「われわれは待つしかない。できるだけ早く結論を出していただければと思います」
しかし、巨額のコストがかかるドーム球場については、自民党会派から反対意見が根強く、自民と対立が続いた川勝県政では、球場の規模を絞り込むことができず先送りに…。基本計画では、「ドーム球場」だけでなく「屋外球場」も含めた3つの案を併記するかたちとなりました。
2024年、川勝前知事の後を受けて県のトップに就任した鈴木知事。「協議会」の初会合が開かれた28日、ドーム球場の建設意欲を問われると…。
(鈴木知事)
「ドームにすれば、いろいろ使い方が広がることも理解できるが」「スピード感というよりも、いろいろな課題があるので、真しに議論をしていかないといけない」
就任以来、繰り返してきた“スピード感”ではなく「丁寧な議論の必要性」を強調しました。さらに、資材や人件費が高騰する影響で370億円と見積もる建設費が“上振れ”する可能性を指摘し、一番の論点は、県と浜松市・民間も含めた「費用負担のあり方」という認識を示しました。
(鈴木知事)
「かなり難しい方程式を解くようなものなので」「費用負担の問題というのは非常に大きいと思いますね。建設費も非常に高騰している状況ですし、財政状況も厳しい中で。どういう風にクリアしていくのかが一番の争点になると思います」
一方、鈴木知事の後を受けて“ドーム建設”を要望している浜松市の中野市長。知事とは対照的に“スピード感”のある議論を求め、「県全体に波及効果がある施設になる」と強調しました。
(浜松市 中野 祐介 市長)
「浜松のためだけという投資では決してなくて、県西部全体、さらには、県下全域に波及が及ぶような施設になる」「民間活力を、いかに巻き込んでいくか、非常に重要なテーマとして議論していかなければいけない」
こうした中、“浜松側”が懸念するのは、ドーム球場の実現が悲願だった鈴木元会長が亡くなったことです。野球場建設のため、浜松市に5億円を寄付するなど、“浜松側”をまとめ引っ張ってきた鈴木元会長がいなくなったことで、議論への影響を心配する声も出ています。
(浜松市 中野 祐介 市長)
「非常に熱心に取り組んでいただいていた鈴木修相談役が亡くなったというのは、われわれとしても応援団という点では、これからの先行きについてどうなるのかなという思いはありますが」「これまでの遺志も踏まえつつ、地域一丸となって実現に向けた取り組みは進めていきたい」
増井副知事を会長、浜松市の長田副市長を副会長として、県と市の幹部13人で発足した協議会。28日の初会合では、財政負担の軽減を図るため、民間の事業者を公募する方針などが示されましたが、早期整備を求める浜松市からは、県に対し“スケジュール感”を問う声が聞かれました。
(浜松市の担当者)
「第6回協議会では最適案取りまとめとありますが、いつごろまでに取りまとめる予定ですか?」
(県の担当者)
「具体的な期限を設けず、協議会の中で丁寧に議論していきたいと考えていて、現時点ではお示しすることができない状況です」
県は、2月から建設会社や開発を行うデベロッパーなど100社ほどからヒアリングする予定です。ただ、ヒアリングに時間がかかるとして、公募の条件を決定する次回会合の日程も示されませんでした。協議会では、6回の会合で球場の規模や費用負担について取りまとめる予定ですが、鈴木知事が表現する“難しい方程式”を解くにはまだ時間がかかりそうです。
この記事の動画はこちらから再生できます