こちらは「へび座」の方向約6500光年先にある「わし星雲」(Messier 16、M16)の一部を捉えた画像です。暗黒星雲が柱のような形をしていることから、この領域は「創造の柱(Pillars of Creation)」と呼ばれています。
この画像は「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」を使って2022年8月14日に取得された画像をもとに作成されました。人の目が捉えることのできない赤外線の波長で観測が行われたため、取得時に使用された6種類のフィルターに応じて着色・合成されています(※)。
※…F090W:紫、F187N:青、F200W:シアン、F335M:黄、F444W:オレンジ、F470N:赤で着色。
柱のように見える部分は、ガスと塵が集まってできた冷たい分子雲です。分子雲の密度が高まった部分は自身の重力で崩壊して、そこから新しい星が形成されます。柱のすぐ外側では、この領域で新たに形成された星々が輝いています。ちなみに、明るい星から放射状に伸びている針状の光は回折スパイク(diffraction spike)と呼ばれるもので、望遠鏡の構造によって生じています。
また、一部の柱の先端には溶岩のように赤く輝いている部分がありますが、アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、これは分子雲の中で形成途中の若い星と関係があるようです。若い星から放出されたガスのジェットが分子雲と衝突し、励起した水素分子から放射された赤外線が、ここでは赤い輝きとして見えているといいます。創造の柱という名前が示すように、この画像には形成されて間もない星とその誕生の現場が捉えられているのです。
創造の柱は「ハッブル」宇宙望遠鏡も1994年と2014年に撮影しています。塵を含む分子雲は可視光線(特に波長の短い青色光)を遮ることもあり、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた創造の柱はそそり立つ岩を思わせる姿でした。
いっぽう、ウェッブ宇宙望遠鏡が主に利用する赤外線は塵に遮られにくいため、柱の内部を見通すこともできます。ウェッブ宇宙望遠鏡の観測によって新たに形成された星の数をさらに正確に特定することで、星形成のモデルの改良につながると期待されています。
ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した創造の柱の画像は、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、そしてウェッブ宇宙望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)から2022年10月19日付で公開されています。
なお、公開された画像はNASAのプレスリリース(以下のURL)などで直接ダウンロードできます。スマートフォンの壁紙にいかがでしょうか?
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2022/nasa-s-webb-takes-star-filled-portrait-of-pillars-of-creation
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Source
Image Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Hubble Heritage Project (STScI, AURA); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI), Anton M. Koekemoer (STScI), Alyssa Pagan (STScI) NASA - NASA’s Webb Takes Star-Filled Portrait of Pillars of Creation ESA - Webb takes a stunning, star-filled portrait of the Pillars of Creation STScI - NASA’s Webb Takes Star-Filled Portrait of Pillars of Creation ESA/Webb - Webb Takes a Stunning, Star-Filled Portrait of the Pillars of Creation文/松村武宏