欧州宇宙機関(ESA)とアリアンスペースは10月19日、開発中の新型ロケット「Ariane 6(アリアン6)」の初飛行について、早ければ2023年第4四半期になる見込みだと明らかにしました。
アリアン6は現在運用されている「Ariane 5(アリアン5)」の後継にあたるロケットです。機体構成は固体燃料ロケットブースター「P120」を第1段の側面に2基備えた「A62」と、4基備えた「A64」の2種類が用意されています。地球低軌道(LEO)への打ち上げ能力はA62が10.3トン、A64が21.6トン。静止トランスファ軌道(GTO)への打ち上げ能力はA62が4.5~5トン、A64が12トンとされています。
ESAによると、アリアン6の発射場となるフランス領ギアナのギアナ宇宙センターでは10月12日、発射台に設置されているアリアン6(A64)の試験用モデルに模擬ペイロードが搭載されました。このモデルはコアステージ(第1段)に採用されているロケットエンジン「Vulcan(ヴァルカン)2.1」の静的点火テスト(static hot-fire test)をはじめ、発射台との機械・電気・配管接続の検証などに用いられます。また、ドイツのランポルツハウゼンでは10月5日から、アリアン6の上段(第2段)に採用されているロケットエンジン「Vinci(ヴィンチ)」の静的点火テストも進められています。
いっぽう、2022年7月13日には別の新型ロケット「Vega-C(ヴェガC)」が初飛行に成功しました。ヴェガCの第1段にはアリアン6の固体燃料ロケットブースターと同じP120が採用されていることから、ヴェガCの打ち上げ成功はアリアン6にとっても非常に重要な出来事だと認識されています。
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10月19日にパリのESA本部で開催された会見の席上、アリアングループのアンドレ=ユベール・ルーセル(André-Hubert Roussel)CEOは、アリアン6の最初のフライトモデルがギアナ宇宙センターに向けて、2022年の終わり頃から2023年の初頭にかけて出荷される予定だと語っています。また、アリアンスペースのステファン・イスラエル(Stéphane Israël)CEOは、同社がすでに29機のアリアン6打ち上げを受注していると述べており、需要と期待度の高さが伺えます。
ただし、アリアン6が1年後に初飛行を迎えられるかどうかはまだ不透明です。ESAのジョセフ・アッシュバッハー(Joseph Aschbacher)長官は、ここ数か月間の進捗状況はアリアン6の初飛行が2023年第4四半期になると予想するのに十分だとした上で、最新のスケジュールが有効であるためには「10月上旬に始まったヴィンチエンジンの燃焼試験に成功すること」「ギアナ宇宙センターでのヴァルカン2.1エンジンの燃焼試験が始まること」「2023年第1四半期までに打ち上げシステムの資格審査が始まること」以上3つのマイルストーンを、タイムリーかつ成功裏に達成しなければならないとコメントしています。
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Image Credit: ESA - D. Ducro, ESA-Manuel Pedoussaut, ESA/CNES/Arianespace/Optique Video du CSG/S Martin ESA - Ariane 6 first flight planned for fourth quarter of 2023 ESA - Ariane 6 stands tall on its launch pad Arianespace - Ariane 6文/松村武宏