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マシュマロ並み?平均密度が低い巨大ガス惑星を赤色矮星の周辺で発見

sorae.jp 2022年10月21日 21時15分

【▲ 赤色矮星を公転する低密度な太陽系外惑星「TOI-3757 b」(右)のイメージ図(Credit: NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva/Spaceengine/M. Zamani)】

カーネギー研究所のShubham Kanodiaさんを筆頭とする研究チームは、赤色矮星(M型星)を公転する非常に低密度な太陽系外惑星を発見したとする研究成果を発表しました。

今回発見が報告されたのは、「ぎょしゃ座」の方向約580光年先にある恒星「TOI-3757」を公転する系外惑星「TOI-3757 b」です。発表によるとTOI-3757 bは、これまでに赤色矮星の周辺で見つかったものとしては最も平均密度が低い惑星だといいます。

■直径は木星とほぼ同じながら質量は木星の約4分の1 平均密度は土星の半分以下

研究チームが発見を報告したTOI-3757 bは、直径が木星の約1.07倍ですが、質量は木星の約0.268倍しかありません。主星からの平均距離は約0.038天文単位(※1)と短く、公転周期は約3.44日(水星の公転周期の25分の1に相当)とされています。

※1…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。

直径と質量をもとに算出されたTOI-3757 bの平均密度は1立方cmあたり約0.27gです。“水に浮かぶ”と表現される土星の平均密度は1立方cmあたり約0.69gですから、その4割にも届かないことになります。研究チームの成果を紹介した米国科学財団(NSF)国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)は、TOI-3757 bの平均密度の低さを「マシュマロに近い」と表現しています。

TOI-3757 bが公転している主星のTOI-3757は、直径と質量が太陽の6割ほどで、表面温度は摂氏約3640度の赤色矮星です。系外惑星のなかにはTOI-3757 bよりも平均密度が低いとみられるものも見つかっていますが、研究チームはこの惑星が赤色矮星の周辺で見つかったことに注目しています。

赤色矮星は天の川銀河ではありふれた小さな低温の恒星ですが、惑星の大気を剥ぎ取ってしまうほど強力な爆発現象「フレア」が表面で発生しやすい、非常に活発なタイプの星として知られています。Kanodiaさんによると、これまでは赤色矮星の周囲で巨大惑星が形成されるのは難しいと考えられていて、見つかったとしても赤色矮星からは遠く離れていたといいます。

【▲ 赤色矮星プロキシマ・ケンタウリで起きた強力なフレアの想像図(Credit: NRAO/S. Dagnello)】

関連:太陽フレアよりも100倍強力なフレアがプロキシマ・ケンタウリで起きていた

赤色矮星の周囲で巨大ガス惑星(特にTOI-3757 bのように低密度な惑星)がどうやって形成されたのかはまだわかっていませんが、研究チームはその謎を解けるかもしれないと考えており、TOI-3757 bが低密度な惑星になった理由を2つ提案しています。

1つは、TOI-3757 bのコア(核)に関連しています。惑星は、若い星を取り囲むガスや塵でできた原始惑星系円盤の中で形成されると考えられています。巨大ガス惑星の場合、まず最初に質量が地球の10倍もある岩石のコアが形作られ、このコアが周囲のガスを急速に引き寄せて大量に取り込むことで形成されたとみられています。

主星のTOI-3757は巨大ガス惑星が見つかっている他の赤色矮星と比べて、重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)の存在量が少ないといいます。TOI-3757 bを生み出した原始惑星系円盤も同様に重元素の存在量が少なかったと考えられることから、岩石コアがよりゆっくりと形成されたことでガスを取り込み始めるタイミングも遅れて、TOI-3757 bの全体的な密度に影響した可能性があるようです。

もう1つは、TOI-3757 bの公転軌道に関連しています。TOI-3757 bは真円よりもややつぶれた楕円形の軌道(軌道離心率は約0.14)を公転しているため、約3日半の間に主星のTOI-3757へ近づいたり遠ざかったりします。この軌道が潮汐加熱(※2)をもたらし、TOI-3757 bは外側からだけでなく内側からも加熱されることで大気が膨張し、結果として平均密度が低くなった可能性も考えられるようです。

※2…別の天体の重力がもたらす潮汐力によって天体の内部が変形し、加熱される現象のこと。

TOI-3757 bはアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」によって最初に発見され、キットピーク国立天文台のWIYN 3.5m望遠鏡など地上の望遠鏡による追加観測が行われました。惑星の形成をさらに深く理解するために、研究チームは「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡によるTOI-3757 bの大気の観測に期待を寄せています。

 

関連:地球型系外惑星は「ペイル・イエロー・ドット」の可能性。惑星進化3つのシナリオ

Source

Image Credit: NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva/Spaceengine/M. Zamani, NRAO/S. Dagnello NOIRLab - ‘Marshmallow’ World Orbiting a Cool Red Dwarf Star Kanodia et al. - TOI-3757 b: A Low-density Gas Giant Orbiting a Solar-metallicity M Dwarf

文/松村武宏

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