こちらは「くじら座」の方向約2億7000万光年先にある相互作用銀河「IC 1623」(VV 114)です。相互作用銀河とは、すれ違ったり衝突したりすることで互いに重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河のこと。相互作用銀河なかには潮汐力によって大きく引き伸ばされていたり、笑顔や鳥を思わせる不思議な姿が観測されたりするものもあります。
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この画像は「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線装置(MIRI)」を使って取得された画像をもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、画像は波長に応じて着色されています(※)。
※…NIRCam:1.5μmを青、2.0μmをシアン、3.56μmを緑、4.4μmを赤で着色。MIRI:5.6μmを黄、15μmをオレンジ、7.7μmを赤で着色。
欧州宇宙機関(ESA)によると、IC 1623は2つの銀河が合体の最終段階を迎えた姿だと考えられています。相互作用が引き金となったスターバースト(爆発的な星形成活動)によって、IC 1623では天の川銀河の20倍以上もの割合で新たな星が形成されているといいます。
天文学者から注目されているIC 1623は「ハッブル」宇宙望遠鏡も観測を行ったことがありますが、主に赤外線の波長で観測を行うウェッブ宇宙望遠鏡は、可視光線をはばむ濃い塵の帯の向こう側を見通すことができます。ウェッブ宇宙望遠鏡は絡み合った銀河のゆがんだ渦巻腕(渦状腕)や、かすかな星間塵の輝きだけでなく、極端なスターバーストが引き起こした強力な赤外線放射も捉えました。
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ESAによれば、IC 1623の銀河核は非常にコンパクトかつとても明るいことがわかったといいます。明るい星などを観測すると、望遠鏡の構造によって「回折スパイク(diffraction spike)」と呼ばれる針状の光が生じることがありますが、ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えたIC 1623の画像にもそれが現れているほどです。
NIRCam、MIRI、および「近赤外線分光器(NIRSpec)」を使った今回のIC 1623の観測によって、銀河の複雑な相互作用を解明する上でウェッブ宇宙望遠鏡がいかに役立つかを示すデータを得ることができたとのことです。冒頭の画像はウェッブ宇宙望遠鏡の今月の一枚として、ESAから2022年10月25日付で公開されています。
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Source
Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus & A. Evans; Acknowledgement: R. Colombari ESA/Webb - Webb Explores a Pair of Merging Galaxies Evans et al. - GOALS-JWST: Hidden Star Formation and Extended PAH Emission in the Luminous Infrared Galaxy VV 114 (arXiv)文/松村武宏