ポツダム天体物理学研究所(AIP)のNikoleta Ilicさんを筆頭とする研究チームは、ホットジュピターと呼ばれるタイプの惑星が公転している恒星について、本来の年齢よりも若く振る舞う可能性を示した研究成果を発表しました。AIPやアメリカ航空宇宙局(NASA)は「アンチエイジング(Anti-Aging)」という表現を用いてIlicさんたちの成果を紹介しています。
■ホットジュピターとの潮汐作用が恒星に“若返り効果”をもたらしている可能性これまでに5000個以上が見つかっている太陽系外惑星のなかには、10日以下という短い周期で恒星を公転している巨大ガス惑星が幾つもあります。木星に似た惑星ではあるものの、恒星の近くを公転しているために高温に加熱されていると考えられていることから、このような系外惑星は「熱い木星」を意味する「ホットジュピター(Hot Jupiter)」と呼ばれるようになりました。
NASAのX線観測衛星「Chandra(チャンドラ)」などの観測データを用いて34個の連星を調べた研究チームは、ホットジュピターを持たない恒星と比べてホットジュピターを持つ恒星のほうが活動的であり、X線をより強く放射する傾向にあることを見出しました。連星を成している恒星は同時に形成されたはずですが、このように振る舞う恒星は本来の年齢よりも若く見えるといいます。
こちらはチャンドラX線観測衛星によって観測された連星「HD 189733」(左)と「WASP-77」(右)です。HD 189733とWASP-77はどちらも片方の恒星でホットジュピターが見つかっています。画像の紫色はX線の強度を示していますが、ホットジュピターを持つ恒星(Hot Jupiter Host)は持たない恒星(Companion)よりもX線を強く放射していることがわかります。
いっぽう、次に示す画像はホットジュピター以外の系外惑星が見つかっている連星「HD 46375」(左)と「HD 109749」(右)の観測結果です。惑星を持つ恒星(Planet Host)と持たない恒星(Companion)のX線強度には、先の2つの連星のような差はみられません。片方の恒星がホットジュピターを持つ連星と、どちらもホットジュピターを持たない連星を比較した今回の研究についてIlicさんは、健康への影響を調べる研究で双子を比較することに似ているとコメントしています。
研究チームによると、恒星の至近を公転するホットジュピターは潮汐力によって恒星に影響を及ぼすことで、ホットジュピターを持たない場合と比べて恒星をより速く自転させる可能性があるといいます。急速な自転によって恒星はより活動的になり、より強くX線を放射することが考えられるようです。つまり、ホットジュピターを持つ恒星が若く見えるのは、ホットジュピターの影響によって若さが保たれていることが理由かもしれないというのです。
研究に参加したAIPのMarzieh Hosseiniさんは、ホットジュピターによる恒星の“若返り効果”は過去の研究でも可能性が指摘されていたものの、今回の研究では「実際に一部の惑星が恒星に影響を与え、若さを保たせていることを示す統計的証拠がついに手に入りました」とコメントしており、この効果が将来の研究でより良く理解されることに期待を寄せています。
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Image Credit: NASA/CXC/M.Weiss, NASA/CXC/Potsdam Univ./N. Ilic et al. NASA - NASA's Chandra: Planets Can Be Anti-Aging Formula for Stars Chandra X-ray Center - Hot Jupiters: Planets Can Be Anti-Aging Formula for Stars AIP - Planets can be anti-aging formula for stars文/松村武宏