既報の通り、日本時間2022年11月16日15時47分(米国東部標準時同日1時47分)、アメリカ航空宇宙局(NASA)は月面探査計画「アルテミス」最初のミッションとなる「アルテミス1」の打ち上げを実施しました。新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」は初飛行に成功し、搭載されていた有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」は月へ向かう軌道に乗りました。
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■オリオン宇宙船は11月21日に月へ最接近する予定 地球帰還は12月11日日本では歴史的な打ち上げから一夜が明けましたが、執筆時点(日本時間11月17日昼)のアメリカはまだ打ち上げ当日の深夜を迎えたところです。25日半のミッションを開始したオリオン宇宙船は、NASAによると日本時間11月16日23時32分(米国東部標準時同日9時32分)に最初の軌道修正噴射を実施しました。オリオンは11月21日に月へ最接近する予定です(最接近時の距離は約60マイル(約96km))。
今回のアルテミス1はSLSとオリオンの無人飛行試験にあたるミッションなので、オリオンに宇宙飛行士は搭乗していません。代わりに、人間の全身を模したマネキンの「Campos(カンポス)」と、胴体を模した人体模型(ファントム)の「Helga(ヘルガ)」と「Zohar(ゾハル)」、計3体が“クルー”として搭乗しています。
また、半世紀前のアポロ計画の頃からNASAとのつながりが深いスヌーピーや、欧州宇宙機関(ESA)が選んだショーン(「ひつじのショーン」の主人公)のぬいぐるみも、無重力インジケーター(※)としてオリオンの船内に搭載されているとのことです。
※…無重力状態になったことを視覚的に示すために宇宙船に積み込まれるマスコットのこと。ゼロGインジケーター。
NASAによると、オリオン宇宙船には合計16台のカメラが搭載されています。カメラは船内だけでなく4基の太陽電池アレイの先端など船外のさまざまな場所にも設置されていて、大小のエンジンノズルが並ぶサービスモジュールや、遠く離れていく地球の姿などが捉えられています。
Time lapse footage from @NASA_Orion as #Artemis I journeys to the Moon. Orion is scheduled to make its closest approach to the vicinity of the Moon on Nov. 21.🌙 pic.twitter.com/6ki89b8lHk
— NASA's Johnson Space Center (@NASA_Johnson) November 17, 2022 ■相乗りしていた日本の探査機「OMOTENASHI」「EQUULEUS」も放出いっぽう、SLS初号機の上段「ICPS」には10機の小型探査機が相乗りして打ち上げられ、オリオン宇宙船の分離後に順次放出されました。このうちの2機は日本の「OMOTENASHI(おもてなし)」と「EQUULEUS(エクレウス)」です。
OMOTENASHIは日本初の月面着陸(セミハードランディング)を目指す着陸機、EQUULEUSは地球から見て月の向こう側にあるラグランジュ点「L2」への飛行を目指す探査機としてICPSに搭載されていました。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
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宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、OMOTENASHIとEQUULEUSはどちらも日本時間11月16日にICPSから放出されました。EQUULEUSは日本時間同日22時50分に、正常に動作していることが確認されています。OMOTENASHIは太陽の補足が完了せず、通信が安定しない状態にあるため、姿勢を安定させて電力を確保し、通信を確立するための運用が継続されているとのことです。
アルテミス1、OMOTENASHI、EQUULEUSについては、随時情報をお伝えしていきます。
Source
Image Credit: NASA, Bill Ingalls NASA - Artemis (NASA Blogs) JAXA - NASA Artemis I 搭載JAXA超小型探査機 OMOTENASHI及びEQUULEUSの状況について文/sorae編集部 - 2022年11月17日13時30分