アメリカ航空宇宙局(NASA)は11月29日(日本時間・以下同様)、無人飛行試験中の新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」が、有人飛行用に設計された宇宙船による地球からの最遠距離記録を更新したと発表しました。
オリオン宇宙船は月面探査計画「アルテミス」や、将来の火星探査も想定してNASAが開発した有人宇宙船です。NASAは「アルテミス1」ミッションで無人飛行試験を行うために、2022年11月16日に新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」初号機でオリオンを打ち上げました。
オリオン宇宙船は11月21日に月の裏側で月面に約81マイル(約130km)まで接近して軌道を変更した後、11月26日にはDRO(Distant Retrograde Orbit、遠方逆行軌道)と呼ばれる月の公転方向に逆行するような周回軌道に入っており、現在は深宇宙環境での点検を受けています。
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NASAによると、オリオン宇宙船は2022年11月29日6時過ぎに地球から26万8563マイル(約43万2210km)のポイントに到達しました。これはアルテミス1ミッションにおいてオリオン宇宙船が地球から最も遠ざかった瞬間であり、前述の通り「有人飛行用に設計された宇宙船が到達した最遠距離」でもあります。
オリオン宇宙船が記録を更新するまでは、52年前の1970年4月に「アポロ13号」が到達した24万8655マイル(約40万171km)が、有人宇宙船による地球からの最遠距離記録でした。オリオンはアルテミス1ミッションにおける最遠距離到達に先立つ11月26日に、アポロ13号が記録した距離を越えています。なお、アルテミス1は無人ミッションであるため、「宇宙飛行士が到達した地球からの最遠距離」は、現在もアポロ13号の記録が最遠となります。
DROに入ったオリオン宇宙船は1週間ほどかけて月の周りを半周する予定で、11月29日の時点では行程の半分を終えたことになります。オリオンは12月2日にDROを離脱し、12月6日に再び月面から約130kmまで接近しつつ軌道を変更して地球に向かい、12月12日に帰還する予定です。
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Image Credit: NASA NASA - Artemis (NASA Blogs)文/sorae編集部