こちらは「いるか座」の方向約5億光年先にある銀河のペア「II ZW 96」(ZW II 96)です。遠方で輝く無数の銀河を背景に、複雑な形にゆがんで絡み合った2つの銀河の様子が捉えられています。
欧州宇宙機関(ESA)によると、II ZW 96では合体して1つの銀河になるプロセスが進んでいます。2つの銀河の中心核は連なる星形成領域によってつながっていて、下に写っている銀河の渦巻腕(渦状腕)は重力の作用で形が崩れています。星形成領域が存在するII ZW 96は赤外線の波長で特に明るく、赤外線の光度が太陽の1000億倍以上にもなる「高光度赤外線銀河(LIRG)」の一つとして知られているといいます。
この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線装置(MIRI)」を使って取得された画像をもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡によるII ZW 96の観測は、同望遠鏡が持つ銀河の複雑な環境を解明する能力に関する知見を得るための観測の一環として、これまでに地上の望遠鏡や「ハッブル宇宙望遠鏡」によって観測されたことがある銀河を対象に行われたとのことです。
冒頭の画像はESAから2022年11月30日付で公開されました。なお、ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色・合成されています(NIRCam:1.5μmを青、2.0μmをシアン、3.56μmを緑、4.4μmを赤で着色。MIRI:5.6μmを緑、7.7μmと15μmを赤で着色)。
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Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus, A. Evans ESA/Webb - Galactic Get-Together文/松村武宏