株式会社ispaceは、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1について12月16日までに、ミッション1のランダー(月着陸船)を予定の軌道へ投入するための初回軌道制御マヌーバと、ランダーに搭載されている顧客ペイロードの確認作業が完了したと発表しました。ミッション1ランダーは約1か月間の深宇宙航行の後に月へ向かう予定です。
【特集】月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1
ispaceによると、2022年12月11日16時38分(日本時間・以下同様)に打ち上げられたHAKUTO-Rミッション1ランダーは、姿勢・電源供給ともに安定した状態で航行を続けています。2022年12月15日12時には初回の軌道制御マヌーバが、翌12月16日には顧客ペイロードに不備がないことの確認が完了したとしています。
ミッション1ランダーは地球や月から一旦離れた後で再び戻ってくるような軌道を描く、低エネルギー遷移軌道(low-energy transfer orbit)を航行しています。低エネルギー遷移軌道は航行するのに時間がかかるものの、少ない推進剤で月へ向かうことができます。ランダーは12月15日時点で地球から約55万km離れた地点を航行しており、2023年1月20日頃に地球から約140万kmの地点(地球から月までの距離の約3.7倍)に到達する予定です。
HAKUTO-Rミッション1では打ち上げから月面着陸までの各段階に応じて10のマイルストーンが設定されています。初回軌道制御マヌーバと顧客ペイロード確認作業の完了をもって、Success 3「安定した航行状態の確立」とSuccess 4「初回軌道制御マヌーバの完了」が完了しました。今後は地球から最も遠ざかる地点へ向かう約1か月の間に、安定した深宇宙航行が可能であることの確認作業が完了すれば、次のSuccess 5「深宇宙航行の安定運用を1ヶ月間完了」が完了することになります。
なお、HAKUTO-Rミッション1ランダーには以下7つのペイロードが搭載されています。
・日本特殊陶業株式会社(HAKUTO-Rコーポレートパートナー)の固体電池
・アラブ首長国連邦(UAE)ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)の月面探査車「Rashid(ラシード)」
・株式会社タカラトミー等が開発した変形型の月面探査ロボット「SORA-Q(LEV-2)」
・カナダのMCSS社が開発した人工知能(AI)を用いたフライトコンピューター
・カナダのCanadensys社のカメラ
・HAKUTOのクラウドファンディング支援者の名前を刻印したパネル
・サカナクションの「SORATO」(HAKUTO※応援歌)の楽曲音源を収録したミュージックディスク
※…HAKUTOは民間初の月面無人探査を競うコンテスト「Google Lunar XPRIZE」に日本から参加したチームで、HAKUTO-Rの前身にあたる。Google Lunar XPRIZEは勝者がないまま2018年に終了。
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Image Credit: ispace, MBRSC, タカラトミー ispace - ispace、ミッション1マイルストーンのSuccess4を完了(12月15日) ispace - ispace、ミッション1マイルストーンのSuccess3を完了(12月16日)文/sorae編集部