こちらは「カシオペヤ座」の方向約7000光年先にある輝線星雲「ウェスターハウト5」(Westerhout 5、Sh2-199)の一部を捉えた画像です。
欧州宇宙機関(ESA)がホリデーシーズンに合わせてセレクトしたというこの画像は、全体が美しい赤色で彩られています。この赤色は若い大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが放つ光によるもので、このような領域はHII(エイチツー)領域とも呼ばれています。
画像の中央左上に浮かんでいる小さな雲のようなものは「[KAG2008] globule 13」あるいは「J025838.6+604259」と呼ばれる天体で、「frEGG」に分類されています。frEGGや「EGG」はガスや塵が集まっているコンパクトな領域です(※)。
※…frEGGはfree-floating Evaporating Gaseous Globule、EGGはEvaporating Gaseous Globuleの略。直訳すればfree-floatingは「自由に浮遊する」、Evaporating Gaseous Globulesは「蒸発するガス状グロビュール」。
ESAによると、密度が高いfrEGGやEGGには、その周囲に広がるガス雲と比べて光蒸発(星の放射によってガスが電離・散逸すること)しにくい特徴があるといます。新たな星の材料となるガスが若い星の放射する強力な紫外線から保護されるのは重要なことであり、frEGGやEGGの多くは新たな星が誕生する場所になると予測されています。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って可視光線と赤外線の波長で取得した画像をもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2022年12月19日付で公開されています。
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Sahai ESA/Hubble - Festive and Free-Floating文/松村武宏