スペースXは、日本時間2022年12月28日、「スターリンク」衛星54機を搭載した同社のロケット「ファルコン9」の打ち上げに成功しました。今回の打ち上げは、スペースXにとって2022年、60回目の打ち上げとなりました。
ファルコン9ロケットは、米国東部標準時2022年12月28日4時34分、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げられました。発射後、第1段機体は大西洋上で待機するドローン船「A Shortfall of Gravitas」への着陸に成功しました。今回使用された機体は、11回目の飛行と着陸になります。これまでに5回のスターリンク衛星打ち上げと2回のGPS衛星打ち上げ、有人宇宙飛行「Inspiration 4」と「Ax-1」の打ち上げ、エジプトの通信衛星「Nilesat-301」の打ち上げに使用されました。
スターリンクは、スペースXが提供する衛星インターネットサービスです。2018年3月に全世界にブロードバンドインターネットを提供する「衛星コンステレーション計画」として連邦通信委員会(FCC)の認証を受けました。同社は計画として約1万2000機の衛星を軌道投入するとしています。これらの衛星は、高度や軌道傾斜角が異なる「シェル1」から「シェル8」に分類された軌道へ投入されます。今回の打ち上げでは「シェル5」へ投入されたということです。
さらにスペースXや海外の宇宙開発メディアによると、今回搭載された衛星は、スターリンク衛星の改良版であり、新しい軌道へ投入することでネットワークの能力を向上できると伝えています。また、これをきっかけとして利用者の増加や、既に多くの人が申し込んでいる地域に対してより早いサービスを提供できるとも伝えています。
スペースXは今回打ち上げられたスターリンクに関する詳しい情報は公開していません。複数の海外の宇宙開発メディアによると、第2世代のスターリンク衛星(Gen 2)の打ち上げなのではないかと言われています。これまで打ち上げてきた第1世代の衛星(Gen 1)よりも大きく、通信能力も向上するとみられます。そして将来的には、直接携帯電話と通信が可能になるということです。
2022年12月1日、FCCはスペースXに対して7500機の第2世代のスターリンク衛星を運用する許可を与えました。公開されているFCCの書類によると、Gen2は高度525・530・535km、軌道傾斜角53・43・33度の軌道でそれぞれ運用されると記されています。NASA Spaceflight.comによると、今回打ち上げられたスターリンク衛星は高度530km、軌道傾斜角43度の軌道へ投入されたということです。この軌道はFCCの書類に記載されている第2世代の衛星の軌道と一致していることから、今回の衛星が第2世代スターリンク衛星と考えられています。
一方で、第2世代スターリンク衛星ではなく、第1世代と第2世代の中間型だという見方もあります。第2世代は、衛星自体のサイズが大きいため、スペースXが開発する新型ロケット「スターシップ」での打ち上げが予定されていました。しかし、スターシップの開発には遅れが生じており、運用段階までには至っておらず、同社が使用できるのはファルコン9ロケットだけです。このような状況のなか、2022年8月には、同社のCEO・イーロンマスク氏が小型化した第2世代を開発中とも述べています。
前述した通り、スペースXは、今回打ち上げられた衛星が第2世代なのか、中間型なのか、もしくは第1世代なのかに関する明言を避けています。
Source
Image Credit: SpaceX SpaceX - STARLINK MISSION FCC - FCC Partially Grants SpaceX Gen2 Broadband Satellite Application Spaceflight Now - SpaceX launches first mission for Starlink Gen2 constellation NASASpaceFlight.com - SpaceX begins launching Starlink second generation constellation Space.com -SpaceX launches 54 upgraded Starlink internet satellites and nails rocket landing at sea in 60th flight of the year文/出口隼詩