アメリカ航空宇宙局(NASA)とロスコスモス(Roscosmos)は1月11日、国際宇宙ステーション(ISS)で係留中に冷却材が漏洩した宇宙船「ソユーズMS-22」について、宇宙飛行士の帰還に使用しないことが決定したと明らかにしました。ソユーズMS-22に搭乗してISSに向かった米露の宇宙飛行士3名は、別の宇宙船で地球へ帰還することになります。
ソユーズMS-22は、ロスコスモスのセルゲイ・プロコピエフ(Sergey Prokopiev)宇宙飛行士とドミトリー・ペテリン(Dmitry Petelin)宇宙飛行士、NASAのフランク・ルビオ(Frank Rubio)宇宙飛行士の3名を乗せて、2022年9月21日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。ISSには9月22日にドッキングしています。
2022年12月15日9時45分頃(日本時間)、ソユーズMS-22の後部にある機器/推進モジュール(エンジンや太陽電池アレイがある部分)からの冷却材の漏洩が検出されました。冷却材は機器/推進モジュールの外装に取り付けられているラジエーターの配管に生じた直径1mm弱の穴から漏れ出し、12月16日3時30分(日本時間)までに冷却材のほとんどが漏出したとみられています。配管の穴は微小隕石の衝突によって生じた可能性が指摘されています。
関連:【続報】冷却材が漏洩した宇宙船「ソユーズMS-22」外装の調査で小さな穴を確認
12月15日はISSロシア区画でプロコピエフ飛行士とペテリン飛行士による船外活動が予定されていましたが、目視で漏洩が確認された後に中止が決まり、同日中にロシア区画のロボットアーム「欧州ロボットアーム(ERA)」による漏洩部分の撮影が実施されました。12月19日にはISSのロボットアーム「カナダアーム2(Canadarm 2)」による再調査が行われ、穴の存在が確認されています。
NASAと協議しつつ状況の分析と対応策を検討していたロスコスモスは、ソユーズMS-22を宇宙飛行士の帰還に用いないことを決定しました。ソユーズMS-22は2023年3月に無人の状態でISSを離脱し、帰還モジュールは通常の帰還時と同じようにカザフスタンに着陸する模様です。
ISSへの往路をソユーズMS-22で飛行したプロコピエフ飛行士、ペテリン飛行士、ルビオ飛行士の帰還には、次に打ち上げられる宇宙船「ソユーズMS-23」が用いられます。ソユーズMS-23はもともと2023年3月16日に3名の宇宙飛行士を乗せて打ち上げられる予定でしたが、この決定により、2023年2月20日に無人で打ち上げられてISSに送られることになりました。
ソユーズMS-23でISSに向かうことになっていたロスコスモスのオレッグ・コノネンコ(Oleg Kononenko)宇宙飛行士とニコライ・チュブ(Nikolai Chub)宇宙飛行士、NASAのローラル・オハラ(Loral O'Hara)宇宙飛行士の飛行は、2023年秋まで延期されました。これにともない、プロコピエフ飛行士ら3名の長期滞在は数か月間延長される見込みです。
ロスコスモスの有人宇宙飛行プログラム担当エグゼクティブディレクターを務めるセルゲイ・クリカレフ氏は、ソユーズMS-22の熱制御システムの修理は非常に複雑であり、コストもかかることから賢明ではないと述べています。また、今回のような事態に備えて予備のソユーズ宇宙船をバイコヌール宇宙基地で常時確保しておくよりも、次に打ち上げられる機体を計画に従って45日以内に準備するほうが適切だとも語っています。
Source
Image Credit: NASA TV, JAXA, RSC Energia Roscosmos (Telegram) TASS - Science & Space文/sorae編集部