ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)のJacob Lustig-YaegerさんとKevin Stevensonさんが率いる研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を使って地球とほぼ同じ大きさの太陽系外惑星を確認したとする研究成果を、アメリカ天文学会の第241回会合にて発表しました。ウェッブ宇宙望遠鏡による観測で系外惑星の存在が確認されたのは、今回が初めてのこととされています。
■直径は地球の99パーセント 大気の有無や組成は今後の観測で結論が出ることに期待研究チームが報告したのは、南天の「はちぶんぎ座」の方向約41光年先にある系外惑星「LHS 475 b」です。LHS 475 bの直径は地球の99パーセントで、主星である赤色矮星「LHS 475」を約2日周期で公転していることが確認されました。
地球から見ると、LHS 475 bは主星の手前を横切る「トランジット」を定期的に起こします。トランジットの間は惑星が主星の一部を隠すため、主星の明るさはほんの少しだけ暗くなります。この時の明るさの変化や光のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)を詳しく調べることで、系外惑星の直径や公転周期、大気の有無や化学組成といった情報を得ることができます。
研究チームはトランジットを利用して系外惑星を検出するアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」の観測データを慎重に検討し、ウェッブ宇宙望遠鏡による観測の対象としてLHS 475を選びました。
2点目の画像には、LHS 475 bがトランジットを起こした時のLHS 475の明るさの変化を明確に捉えたウェッブ宇宙望遠鏡の「近赤外線分光器(NIRSpec)」の観測データ(紫色)が示されています。データは2022年8月31日に行われた観測の際に取得されたものです。
また、系外惑星が主星の手前を通過している時に主星のスペクトルを得る分光観測を行うことで、惑星の大気にどのような物質が存在するのかを知ることができます。次の3点目の画像には、LHS 475 bの透過スペクトル(系外惑星の大気を通過してきた主星の光のスペクトル)の取得結果が示されています。発表の時点ではLHS 475 bの大気の有無や化学組成について結論は出ていませんが、少なくとも土星の衛星タイタンのようにメタンを主成分とする厚い大気は存在しないとみられています。
ただし、火星のように二酸化炭素を主成分とする大気は薄いために検出するのが難しく、大気が存在しない場合と区別しにくくなるといい、研究チームはさらに詳しいデータを得るべく2023年夏に追加観測を行う予定です。これまでに得られたデータからはLHS 475 bの表面温度が地球と比べて摂氏200~300度ほど高いことが示されており、もしも二酸化炭素の大気と雲の存在が検出されれば、金星に似た惑星だと結論付けられる可能性もあるようです。
ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データをもとにしたLHS 475 bの確認は、まだほんの始まりにすぎません。従来は観測手法の制約もあって巨大ガス惑星が主な研究の対象になっていたといいますが、今回の成果はより小さな系外惑星を特定できるウェッブ宇宙望遠鏡の高い精度を改めて示すことになりました。Lustig-YaegerさんとStevensonさんは、ウェッブ宇宙望遠鏡を使った観測によって今後より多くの岩石惑星が発見されることに期待を寄せています。
Source
Image Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI); Science: Kevin B. Stevenson (APL), Jacob A. Lustig-Yaeger (APL), Erin M. May (APL), Guangwei Fu (JHU), Sarah E. Moran (University of Arizona) NASA - NASA’s Webb Confirms Its First Exoplanet ESA - Webb confirms its first exoplanet STScI - NASA’s Webb Confirms Its First Exoplanet ESA/Webb - Webb Confirms Its First Exoplanet文/sorae編集部