ワシントン大学の博士課程学生Anastasios Tzanidakisさんを筆頭とする研究チームは、「や座」の方向にある“変わった振る舞い”を見せた恒星「Gaia17bpp」(2MASS J19372316+1759029)に関する研究成果を、アメリカ天文学会の第241回会合にて発表しました。
■Gaia17bppの減光は伴星を囲む円盤による「食」だった可能性欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア(Gaia)」などの観測データから、Gaia17bppは2012年から2019年までの約7年間、最大で約4.5等級(約63倍)も暗くなっていたことが知られています。研究チームが過去の記録を1950年代まで遡って調べたところ、66年以上に渡る観測期間のうち、Gaia17bppが減光したのはこの1回だけだったといいます。また、Gaia17bppの周辺に見える星は、このような減光をしていないこともわかりました。
Gaia17bppとその減光の分析を進めた研究チームは、この星をゆっくりと公転する伴星が減光の原因だったと考えています。研究チームによると、Gaia17bppは半径が太陽の55倍の赤色巨星で、その周囲を1000年近い周期で伴星が公転しているとみられています。この伴星は塵を多く含む大きな円盤に囲まれており、地球から見て円盤がGaia17bppを隠す「食」が起きたために、7年間に渡る減光が観測されたのではないかというわけです。
Tzanidakisさんによると、円盤の半径は1天文単位(※)以上の可能性があるようです。研究に参加した同大学のJames Davenport助教授によると、伴星を囲む円盤は食のあいだ、Gaia17bppからの光を約98パーセント遮断していました。また、幾つかの予備データは伴星が白色矮星である可能性を示しているといいます。
※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。
円盤を持つ伴星が減光の原因だと考えられている星といえば「ぎょしゃ座イプシロン星」が有名です。ぎょしゃ座イプシロン星の場合は減光の開始から終了まで約2年間ですが、Gaia17bppは約7年間と長いことが特徴的です。また、ぎょしゃ座イプシロン星の減光は約27年周期で起きますが、Gaia17bppの場合は次の減光が観測されるのは何百年も先と推定されているため、いま生きている人がGaia17bppの減光を再び目撃することはなさそうです。
「偶然の発見でした」と語るTzanidakisさんは、このような連星は奇妙ではあるものの、従来の想定よりも一般的な可能性があり、形成に関する理論を考案する必要があるかもしれないとコメントしています。
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Image Credit: Anastasios Tzanidakis, Pan-STARRS1/DSS, NASA/JPL-Caltech University of Washington - The seven-year photobomb: Distant star’s dimming was likely a ‘dusty’ companion getting in the way, astronomers say文/sorae編集部