こちらは約32光年先の赤色矮星「けんびきょう座AU星(AU Mic)」を取り囲むデブリ円盤(debris disk、岩石・氷の破片や塵からなる円盤)を捉えた画像です。「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」を使って取得されました。けんびきょう座AU星(星印の位置にある)そのものからの赤外線は、NIRCamのコロナグラフを使って遮られています。
ウェッブ宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、上段の画像は波長3.56μm、下段は波長4.44μmでそれぞれ取得されました。デブリ円盤は直径約60天文単位(※)で、研究者はウェッブ宇宙望遠鏡の観測データをもとに星から5天文単位(太陽から木星までの距離に相当)の範囲まで円盤をトレースできたといいます。
※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。
けんびきょう座AU星は年齢約2300万年の若い星で、これまでに2つの太陽系外惑星「けんびきょう座AU星b」「同c」が発見されています。NASAゴダード宇宙飛行センターのKellen Lawsonさん(ウェッブ宇宙望遠鏡によるけんびきょう座AU星の観測を行った研究チームを率いる)によると、デブリ円盤を構成する破片や塵は、惑星形成後に残された微惑星どうしの衝突によって絶えず補充されているとみられています。
ウェッブ宇宙望遠鏡のNIRCamは、けんびきょう座AU星のデブリ円盤を予想以上に詳細に捉えたといいます。研究チームはデブリ円盤が短い波長でより明るいことを発見しました。けんびきょう座AU星のデブリ円盤には短波長の光を効率的に散乱させる細かな塵が多く含まれている可能性があり、けんびきょう座AU星の放射圧が円盤から細かな塵を放出する大質量星の放射圧ほどには強力ではないとする過去の研究成果とも一致するといいます。
NASAゴダード宇宙飛行センターのJosh Schliederさんは、デブリ円盤は予想以上に明るく、予想以上に星の近くでも検出されたと語っており、さらなる予想外の驚きがあるだろうと期待を述べています。研究チームの最終目標は、太陽系で例えれば木星から海王星に相当する、恒星から遠く離れた軌道を公転する系外惑星の検出だということです。冒頭の画像は2023年1月11日付で公開されています。
Source
Image Credit: Science: NASA, ESA, CSA, Kellen Lawson (NASA-GSFC), Joshua E. Schlieder (NASA-GSFC); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI) STScI - New Webb Image Reveals Dusty Disk Like Never Seen Before ESA/Webb - Dusty Debris Disk Around AU Mic文/sorae編集部