東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の大学院生・池邊蒼太さんを筆頭とする研究チームは、日本の電波望遠鏡を使って初めて「高速電波バースト(FRB:Fast Radio Burst)」を検出することに成功したとする研究成果を発表しました。
2007年に初めて観測された高速電波バーストは、千分の数秒というごく短時間だけ強力な電波パルスが放出される突発的な現象です。その発生源や電波が放出される仕組みについては不明な点が多いものの、一度しか電波を放出しない「単発型(非反復型)」と、電波パルスを繰り返し放出する「リピート型(反復型)」に分類できることが知られています。また、2020年には天の川銀河内のマグネター(強力な磁場を持つ中性子星)が発生源の一つだとする研究成果が発表されています。
関連:天の川銀河からの高速電波バーストを検出。発生源は「マグネター」か(2020年7月)
研究チームは今回、リピート型の高速電波バーストの発生源である「FRB 20201124A」を対象に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の臼田宇宙空間観測所(長野県)にある64mパラボラアンテナを電波望遠鏡として使用し、2022年2月18日に合計8時間の観測を実施しました。1984年に完成した臼田の64mアンテナはもともと通信用に建設されましたが、電波望遠鏡としても活躍しています。
観測の結果、研究チームは周波数約2GHzで1件の高速電波バーストを検出することに成功しました。日本での高速電波バースト検出は今回が初めてのこととされています。高速電波バーストの多くは約600MHzや1.5GHzで検出されているといい、今回の観測結果はFRB 20201124Aにおける最も高い周波数での検出となりました。
研究チームによると、一般的なリピート型の高速電波バーストは単発型と比べてエネルギー密度(明るさ)が低いものの、今回検出された高速電波バーストのエネルギー密度は単発型と同程度だったことがわかりました。このことから、リピート型の高速電波バーストでも単発型の高速電波バースト並みに明るくなる可能性や、単発型として認識されている高速電波バーストのなかにも電波の放出を繰り返すリピート型が含まれている可能性が示唆されるといいます。これらの可能性を確かめるために、今後は単発型とリピート型の両方を追跡観測する必要があると研究チームは指摘しています。
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Image Credit: JAXA, 東京大学/Ikebe et al. 東京大学 - 臼田64 m電波望遠鏡を用いた日本初の高速電波バースト検出 国立天文台水沢VLBI観測所 - 臼田64m電波望遠鏡を用いた日本初の高速電波バースト検出文/sorae編集部