こちらはアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」が撮影した最新のセルフィー(自撮り)です。Perseveranceのロボットアーム先端にあるカメラ「WATSON(Wide Angle Topographic Sensor for Operations and eNgineering)」を使って2023年1月20日(ミッション682ソル目※)に撮影された56枚の画像を組み合わせて作成されました。
※…1ソル(Sol)=火星での1太陽日、約24時間40分。
Perseveranceの目の前の地面をよく見ると、1本の白っぽい棒状の物体が落ちています。これはPerseveranceによって採取された火星のサンプルが収められているチューブ状の保管容器で、撮影が行われた日までに9本のチューブが付近一帯の地面に配置されました。
NASAと欧州宇宙機関(ESA)は現在、火星の表面で採取したサンプルを地球に持ち帰る「火星サンプルリターン(Mars Sample Return)」計画を共同で計画・実施しています。この計画は「火星でのサンプル採取」「サンプルの回収と打ち上げ」「サンプルを地球へ輸送」という三段構えのミッションで構成されていて、Perseveranceは第1段階のサンプル採取を担うNASAの火星探査ミッション「Mars 2020(マーズ2020)」の探査車として、2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターに着陸しました。
Perseveranceが採取したサンプルは、NASAが担当する第2段階「サンプルの回収と打ち上げ」のミッションで回収され、小型ロケットを使って火星の周回軌道へ打ち上げられます。軌道上には第3段階「サンプルを地球へ輸送」のミッションを担当するESAの探査機が待ち構えていて、小型ロケットから放出されたサンプル入りのコンテナをキャッチし、回収カプセルに収容した上で地球に運ばれる予定です。
【▲ 火星サンプルリターン計画のイメージ動画】
(Credit: NASA/ESA/JPL-Caltech/GSFC/MSFC)
サンプルを収めた保管容器はPerseverance自身が第2段階ミッションの着陸機まで運ぶことになっていますが、地表に配置された保管容器をロボットアーム付きの小型ヘリコプターで拾い集める方法もバックアップとして用意されています。セルフィーに写っている保管容器もバックアップとして配置されたもので、チューブの中にはミッション374ソル目に採取された岩石のコアサンプルが密封されています。ちなみに同じ岩石からはミッション371ソル目にもコアサンプルが採取されていて、Perseveranceが着陸機へ運ぶ日まで車体内部に保管され続けます。
関連:NASA火星探査車がサンプル保管容器の地表配置を開始 火星サンプルリターン計画での回収を想定(2022年12月24日)
Perseveranceには採取したサンプルを保管するためのチューブ状の容器が合計43本搭載されていて、これまでに18本の保管容器にサンプルが収められて密封されました(大気のサンプルを収めた1本を含む)。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、セルフィーの撮影場所付近一帯には全部で10本の保管容器が地表へ配置されることになっています。
なお、2022年12月時点の計画ではESAが担当する地球帰還用の探査機は2027年に、サンプル打ち上げ用の小型ロケットを搭載したNASAの着陸機は2028年に打ち上げられます。Perseveranceが採取した火星表面のサンプルは、早ければ10年後の2033年に地球へ届けられる予定です。冒頭の画像はJPLから2023年1月24日付で公開されています。
【▲ Perseveranceのセルフィー撮影方法を解説した動画(英語)】
(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS NASA/JPL - Perseverance's Three Forks Sample Depot Selfie文/sorae編集部