アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月26日、1年3か月前に打ち上げられた小惑星探査機「ルーシー(Lucy)」の探査目標として、小惑星帯の小惑星「1999 VD57」が新たに追加されたと発表しました。
2021年10月16日(日本時間)に打ち上げられたルーシーは、小惑星帯および木星のトロヤ群に属する小惑星の探査を目的としています。複数の小惑星を訪問することから、ミッションの期間は2021年から2033年までの12年間が予定されています。今回1999 VD57が追加されたことで、探査目標の小惑星は合計10個になりました。
木星のトロヤ群とは太陽を周回する小惑星のグループのひとつで、太陽と木星の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にある「L4点」付近(公転する木星の前方)と「L5点」付近(同・後方)に分かれて小惑星が分布しています。
木星のトロヤ群小惑星は、初期の太陽系における惑星の形成・進化に関する情報が残された「化石」のような天体とみなされています。これらの天体を間近で探査することから、ミッションと探査機の名前は有名な化石人骨の「ルーシー」(約320万年前に生息していたアウストラロピテクス・アファレンシスの一体)にちなんで名付けられました。
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ルーシーは打ち上げから1年後の2022年10月16日に、軌道を変更するための第1回地球スイングバイを行いました。このスイングバイで約2年周期の楕円軌道に入ったルーシーは2024年12月12日に再び地球へ接近し、第2回地球スイングバイを実施して木星の前方トロヤ群へ向かう軌道に乗る予定です。
ルーシーのミッションで最初に探査が予定されていた目標天体は、2025年4月に接近する小惑星帯の小惑星「ドナルドヨハンソン」でした。しかし、小惑星帯で正確な軌道が判明している50万個の小惑星を詳しく調べたところ、軌道を修正しない場合でも1999 VD57から4万マイル(約6万4300km)以内を通過することが判明したといいます。そこで、運用チームはこの小惑星を目標天体に加えた上で、約280マイル(約450km)まで接近できるように軌道を修正することを決定しました。
ルーシーによる1999 VD57のフライバイ観測は2023年11月1日に予定されています。この観測における1999 VD57のクローズアップ画像取得は、ルーシーで採用された小惑星の自動追尾システムの技術試験も兼ねています。その1年半ほど後に前述のドナルドヨハンソンを観測したルーシーは、木星に先行するL4点のトロヤ群に向かい、2027年8月に「エウリュバテス」とその衛星「ケータ」、同9月に「ポリメレ」とその衛星、2028年4月に「レウコス」、同11月に「オラス」のフライバイ観測を実施します。
L4点の木星トロヤ群で探査を終えたルーシーは再び地球へと戻り、2030年12月に第3回地球スイングバイを行って軌道を変更。今度は木星に後続するL5点のトロヤ群に向かい、2033年3月に二重小惑星「パトロクルス」「メノエティウス」のフライバイ観測を行ってミッションを終える予定です。
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Image Credit: Southwest Research Institute, Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission), NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab NASA - NASA’s Lucy Team Announces New Asteroid Target SwRI - SwRI-led Lucy team announces new asteroid target文/sorae編集部